たった一度の裏切りで、きっとまだ続く未来へ
静けさの渋谷
誇り高くなびくエースオブドラゴンの旗
「・・・終わりだ・・勝者っ武藤!・・
そして・・この抗争・・大花の勝利!」石川
「・・はるかちゃん・・・」萩原が、はるかに名簿を渡す
「そ・・そんなぁ・・・・」はるか
大花組の名簿に書かれた名前は、橘と武藤
そして、プレジェイに書かれた名簿にも武藤。
東京のドンになる為に・・
強力な・・・
まさかの武藤の裏切り。
たった一度の裏切りで、
きっとまだ続く未来へ。
うなだれるリカ
そしてやさしく微笑みながら、前に出てくる美月
それに気づく武藤。
「・・・突き抜けた夜から・・・愛を込めて・・・」武藤
「ふふ・・・」美月
「・・もう、愛してるって言ってやる・・・」武藤
「もう?・・・」はるか
「・・・・・・」岩永
「愛してるよ・・美月・・・・・大花・・美月。」武藤
「ええ。私も愛してる。」美月
「なっ!!?」はるか
「おっ!・・大花!!?」リカ
「・・・安易な考えっちゃ、考えだけどな・・」ヤクケン
「荒尾が付けてくれたんや・・三日も寝ずに考えて・・」真美
「・・殺人・・ギャングスタ・・・」はるか
~~~~回想。美月誕生~~~~
深夜遅くに出産
「おぎゃ~~おぎゃ~~」生まれたばかりの美月
「おお~かわいいな~女の子か」荒尾
「うん。元気で生まれて良かった・・」真美
「荒尾君、名前付けてよ。」ヤクケン
「バカ!俺なんかに・・」荒尾
「うん。付けてや、荒尾っ。そのかわりセンスあるのにな」真美
ヤクケンの良き兄貴分であり、大花組でも、すばらい功績。
ヤクケンと真美の喧嘩を止めるのも、いつも荒尾。
二人には、無くてはならない人物。
それから三日・・・
「すっげえ悩んでますね・・」西田
「ヤクケンと姐さんの子供だぞっ!もう、徹底して・・う~ん
よしっ!生まれた日の夜の事と、真美姐さんの様に・・」荒尾
「美月?」ヤクケン
「ああ。大花美月!満月が綺麗だったのと、
真美さんのように。美しくなるように美を入れて!
それに、なんちゅうか、夜に美しく!照らされるような!」荒尾
「うん。ええんちゃう。ありがと荒尾っ」真美
「完全にキャバ嬢ぽいな・・」ヤクケン
「でも、字体もシンプルで俺も、すげえ好きです」西田
「花鳥風月みたい・・」ヤクケン
「ははっええやん。はよ、大人になってええ男捕まえるんやぞ!」真美
「わはははは」一同
~~~~~回想終了~~~~~~
愛し合えなかった二人・・・
愛してると言えなかった二人・・・
(娘・・・完全にノーマークだった・・・渋谷ナンバー1キャバ嬢・・
まさか・・ヤクケンさんの娘だったとは・・)はるか
鍵を握っていたのは、美月・・・
知ってるのは、ヤクケン・真美・死んだ荒尾・西田
そして、武藤。
いやっ・・
「これか・・岩永が、真美さんにキレてた事・・・」幹部川上
思い出すあの言葉・・
『おめえが、知らねえんだよ!これが抗争だ!
ここにたどり着くまでに、何人死んだと、思ってんだ!ああ!!?
それに俺が、知らないとでも、思ってるのか!?
ブチ殺すぞ!この野郎!!』
俺が知らないとでも、思ってるのか・・・・
「・・・・・・」岩永
「・・・いい子、育てたじゃない。岩永君・・」銀帝
「親方ぁ・・」リカ
武藤の真似して、銀帝を親方と呼んでるリカ
「今回も私の負けか・・・」銀帝
「ですね・・僕もですが・・」岩永
(負け・・そうっ・・私が武藤君を・・奪いきれなかった・・)リカ
銀帝の育てたリカの敗北
武藤を育てた岩永の勝利
だが抗争に勝ったのはヤクケン
「相撲に勝って、勝負に負けるか・・・」石川
「くく・・懐かしいな・・」ヤクケン
池袋大戦争の時は、ヤクケンが相撲に勝って勝負に負けた
「・・じゃあ・・・岩永と、山本には・・」ヤクケン
(罰?・・そう、負け・・勝ったのは、武藤だけど、
今、渋谷に高々と掲げられた、エースオブドラゴンの旗・・)はるか
「死んでもらおう・・・。」ヤクケン拳銃を取り出し岩永に向ける
「なっ!バカな!冗談やめて!」はるか
「うっ!!」はるか
ヤクケンの顔が冗談ではないと、物語っている・・
一瞬で血の気が引いていく、はるか
「・・・ねーちゃん・・これは抗争だ・・
ガキの喧嘩じゃねえ・・あたりまえの事だ・・」ヤクケン
「アンタぁ・・」真美
岩永と山本が居れば、また火が着く
「そんなぁ・・ねえ、慶太さんっ・・けっ・・」また、ハッとする、はるか
覚悟を決めたような・・いやっ・・もう、覇気すらない
ただ愚痴くらいしか・・
「・・だから、山本出せって、言ったんだ・・」岩永
「そんなぁ。だって、抗争に負けたから、殺すなんて・・」はるか
「・・何言ってんだ?ねーちゃん、ゲームしてんじゃねえんだぞ」ヤクケン
「当然・・俺が勝ったら、ヤクケンと荒尾・・いやっ真美さんは・・殺してる」岩永
「だって・・だって・・」(嘘でしょ!?どうしてこんな事に・・)はるか
「岩永ぁ・・」真美切なそうに
「ねえ!石川さんっ!石川さん!」もう、涙目のはるかが、石川にすがり
「・・・・・・」ただ瞳を閉じる石川
「本当に!?どうして、殺されるくらいなら、戦ってよ!慶太さん!」はるか
「・・・だから、お前が代理で、戦ったじゃないか、もう・・」岩永
「ドッ・・」へたり込んでしまう、はるか
もう、終わったのだ・・・
覚悟が足りなかったのは、はるかや、幹部達。
アウトローのおもちゃで遊んでいただけ・・
命まで取られるとは・・
負けることは無い・・・
勝つんだ・・・
大丈夫・・・
「山本・・・・・」真美
「・・・・・山本か・・・」ヤクケン
先ほどから、うつむいたままで、一言も、しゃべってなかった山本
フラフラとヤクケンの前に・・
当然、山本も覚悟はしている。
岩永にしては、あの休養を無理やり取らされた日に・・・。
「スッ・・」
「なっ!」真美
山本が手を付き・・
「・・・ウチの岩永だけは・・生かさしてください・・」山本が土下座
「やめえっアンタ、妊娠までしとるのに!
そんな寒いアスファルトに土下座なんかせんでも」真美
「バッ!!」
すかさず、はるかも・・
「お願いです!!抗争の責任は私!岩永と、山本は!
岩永と、山本は!!」はるかも土下座で地面に頭をこすり付ける
「アンタぁ・・・・ヤクケンの格が下がる・・」真美、ヤクケンの方を見て
「ああ・・分かってる・・・」ヤクケン
(頼むっ責任は、私っ!私っ!!)はるか
「妊婦まで、殺したとなっちゃ、俺の格が下がる・・・」ヤクケン
(妊婦まで?・・)はるか
「山本は、生涯自宅軟禁。
そして岩永は・・・残念だが・・・これが抗争だ・・」ヤクケン
「そんな!」はるか
「バッ!」「バッ!」「バッ!」
「・・・・・」ヤクケン
次々と土下座し、頭を地面に付ける者・・
幹部達や、銀帝、リカ、
そして・・・武藤まで。
「・・おかしな話かも、知れませんが・・・」武藤
「・・・・・」ヤクケン
「バッ!!」
「なっ!」真美
さらに・・
「・・・・惚れた男が、頭を下げております・・
私が下げずして、女が務まるでしょうか?」美月も土下座
(美月・・美月ぃ・・)武藤
(敵わない・・私が逆なら、出来ただろうか?・・これが差・・)リカ
「・・・最大で、最強の武器か・・・人望・・岩永よ・・」ヤクケン
「あんたぁ・・ウチからも・・岩永は、これからの日本に必要や・・」真美
「バッ!!!」「バッ!!」
「なっ!・・・ヒロぉ・・・」真美
そうっ、金山と、渡辺まで・・・
「岩永は殺せません・・それなら俺を・・」金山
「いやっ・・金山と、俺の首を・・」渡辺
「・・・・・・」ヤクケン
ただ沈黙が続く、動かないヤクケン
(荒尾君・・・藤原・・・西田・・
じゃあ、何の為に俺は今ここに居る?・・)ヤクケン
もうエースオブドラゴンはヤクケンだけ・・・
「・・・ちょっと、待てやっ!!!」
「・・・椎名さん・・」真美
「・・・・」ヤクケン
急に椎名さんが登場。
そうっ・・遂にユリアを粉砕。初勝利。
そして駆けつけた・・
だが、大花組の兵隊から聞こえる愚痴というか・・
「ちっ・・なんだ?今頃?」
「もう、とっくに終わったぞ抗争は!」
「でも、面倒だな・・」
「ああ。アホらしいけど、格で言えば・・」
「ああ。ヤクケンさんより上。東義会の会長だ・・」
「正直、大花組と東義会の戦力は五分。抗争にでもなったら・・」
「バッ!!!!」
「なっ!!!!」真美
「えっ!!!」
驚く一同、あの椎名さんが・・・
「・・・・俺の土下座じゃ不満か・・・・
見ろやっ!関東最大の暴力団の組長の土下座を!!!」椎名
「うう・・うう・・」号泣する、はるか(椎名さん・・椎名さん・・)
椎名さんが、冷たいアスファルトに血が出るほど頭をこすり付ける
「・・・・・・」石川
「・・・・・・」萩原
黙ったままの重鎮達
「ヤクケン・・岩永が頭下げたら許せやっ・・
でないと、ウチの東義会の拳銃が、大花組に向く・・
本当に最後の抗争に・・そして、死人も、こんなもんじゃねえ・・
何十人・・何百人と死ぬ事になる・・・」椎名
「うっ・・アンタ・・」真美
よく見れば、東義会の組員が数百名取り囲んでいる
今にも大花組員と、一触即発な雰囲気
「なるほど・・・・・敵わない・・さすが関東最大の組長になる人・・
・・岩永・・・手を付け・・(土下座しろ)
俺の右腕(荒尾)のポストが空いている・・・・」ヤクケン
「・・・・・・」岩永
「慶太さんっ!」はるか
「岩永~」「岩永さんっ」「親方っ」
「しなくていい!!!!」大声で山本が
「なっ!あきなさん・・」はるか
「・・・・・・」岩永
「子供には、立派なアウトローだったと、伝えます・・」山本
「だめっ!あきなさんっ!」はるか
「なっ!山本・・」真美
(生かしてほしい・・だけど、岩永に頭は下げさせない・・プライド・・)山本
見てられない。それだけは。今まで信じて付いて来たチームの大将が土下座など・・
死んだ他のメンバーも生きていたら、そう言ったはず・・
「岩永っ!下げろ頭!それで、終わる。
たった、一度頭下げただけで、生きれる!お前が必要なんだ!」椎名
「岩永ぁ・・岩永ぁ・・頼む・・下げてくれ・・頼む・・・」真美
「・・・その、咲き乱れた、アウトローの華のまま散って行くか・・
父親として、そして、俺に負けを認め、俺の下で生きていくか・・
お前が決めろ・・・」ヤクケン
「・・・たった、一度・・・・されど、一度・・・ふふ・・」やさしく笑う岩永
(お願いっ慶太さん・・)はるか
「くく・・笑われちまう・・
死んで行った友に・・・・。アウトローで・・死んでやる。」岩永
「・・・分かった・・・弟よ・・」ヤクケン(佐藤の弟と兄弟分的な弟の両方の意味で)
ヤクケンが拳銃を岩永の顔に向ける・・
「姉貴に、よろしく・・・」ヤクケン
「くく・・先に俺が愛してやるよ」岩永
「ふわっ・・・」
風・・・・
何か、やさしく感じる・・・
(ふふ・・友よっ・・・天国は、爆撃が強いんだろ・・・待たせたな・・)岩永
「・・・・・」ヤクケン
だが、ヤクケンが、拳銃を岩永から少しそらし・・
「タァアアアン・・・」
「うっ!・・・・・」一同が、ヤクケンの方を・・
いやっ。ヤクケンが撃った先を・・
ヤクケンが撃ち抜いたのは、なんと・・・
エースオブドラゴンの旗
「・・今、死んだ・・・くだらない、アウトローのプライドは・・
それは、お前も・・俺もだ・・・引き分けだ・・この勝負は・・
岩永・・・・弟よ・・・東京を任す・・・」ヤクケン
「・・・・・・・・負けました・・・」岩永
(友よ・・すまんっ・・・・負けた・・)
ヤクケンの勝ち。だが折れたのはヤクケン。悪党に、なりきれなかったから。
岩永の負け。だが折れなかったプライド。悪党で、死んで行きたかったから。
そして、もう、土下座などしなくてもいいが
「これから・・・・よろしくお願いします」岩永が土下座
「頼むぞ・・・弟よ。」ヤクケン
「うわああああん」はるか
「うっ・・うっ・・」お腹に手を当て涙するあきな
涙が、止まることなく・・
他の者達も。
異様な光景・・・全員がヤクケンに向かい土下座・・・
引き分けだとヤクケンは言うが、実際は
プレジェイ・爆撃の、くそぶざまな敗北。
抗争なんて失った物が多い方の勝利。
勝ってみても、こんなもんかと、思うだけ・・
渋谷戦争、完全決着。
ヤクケンにすべて、飲み込まれる。
誰も、笑わない。
勝っても・・
負けても・・
なぜか・・・
何を思い出したのか・・
何を思ったのか・・
こぼれ落ちる涙
最後にヤクケンが・・
号泣。
いい大人が・・
子供のように。
真美に抱きつき・・・
万感なる想い
ヤクケン渋谷奪還。
ただ・・・切なく・・・
穴の開いたエースオブドラゴンの旗が、なびくだけ・・
悲しみを詰め込んだ、さぼてんのクズ達が、東京で殴り合う運命のラプソディー
終焉。
渋谷に吹き抜けた風だけ、笑う。
これからの、やさしい未来に。
さぼてんの殴り合い 完
「ロック・・エンドロ~ル・・・」椎名
「・・・・・・・はぁ!?」全員




