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昔々、彼の地には雪の神様が居ました
百年前? 千年前?
彼の地を初めて踏んだ人々がその神様の親でした。
人々の祈りから生まれた神様でした。
その地はとても寒く、生きて行くのはとても難しい土地でした。
だから人々は祈りました。
雪と上手く共存できるように。
春には命が芽吹くように。
そうして産まれたその神様は、雪の神様でした。
集落が雪崩に襲われそうになれば、その大きな掌でそっと守ってくれる神様でした。
春に芽吹く命を淡雪で優しく抱きしめてくれる神様でした。
ですが、時が経つに連れて、神様に祈る人は少しずつ、少しずつ居なくなっていきました。
祈りが減り、神様はそれと同じだけ小さくなりました。
でも、それでも、神様は守り続けます。
ひとりでも祈ってくれる人がいる限り。
ひとりでも必要としてくれる人がいる限り。
ひとりでも愛してくれる人がいる限り。
いえ、愛してくれなくとも、覚えていてくれる限り。
その為に産まれたのだから……。