3日目
「よっ希っ」
俺がロビーに入ると薄井が挨拶をしてきた
薄井と馴れ合うような気分じゃない俺はそれをシカトし席に着いた
田熊の行方は未だにわかっていない
田熊・・・お前は一体どこにいるんだ?
「あれ、珍しいなカンは寝坊か?」
まだ食事の挨拶をしていないにも関わらず直木がフレンチトーストを食べながら言った
正確にはチョコレートでフレンチトーストとハチミツと生クリームを挟んだチョコサンドだが
「俺、呼んできます」
俺はそう言うとロビーから出た
とてもじゃないが食欲なんて出なかった
カンの部屋につくとまず名前を呼んだが返事がない
ドアノブを回すと鍵はかかっていなかった
俺はまさかと思い身構えドアを思い切り開け放った
しかしカンの部屋には何もなかった
カンまでが姿を消してしまったようだ
俺は気が遠くなりそうだったが何とか深呼吸をすると気持ちを落ち着かせた
今のところこの殺人や失踪に関連性はない
ということは犯人は俺らを皆殺しにするつもりなのかもしれない
何だか俺は無性に腹が立ってきた
腹が立つと今度は急に食欲が湧いてきた
腹が減っては戦はできぬ・・・か
よっしゃ、食って気分転換でもするか
それから田熊とカンを見つけて犯人を突き止めてやる!
俺が食堂へ戻ると皿が空になっていた
直木のほうを見ると慌てて眼をそらされた
このデブ・・・
希がカンがいないと言うことを一通り説明し終わると俺は席を立った
「先生、どこにいくんですか?」
高山が尋ねる
「俺の生徒が失踪したんだ、じっとしていられるか!」
俺はそういうとロビーを飛び出した
とは言っても奴らがいそうな場所の見当なんてまったくない
まあ、そんなことはどうでもいいんだ
あと1日明日になれば迎えのボートが来る
それまで何としてでも生き残らなければならない
俺だけでも生きて帰らなければ
「なんてことだ!!」
そのときキッチンのほうからマルコスの叫び声が聞こえた
俺は急いでキッチンへ駆けつけると冷蔵庫の前で膝をついているマルコスがいた
「あ・・・あ・・・」
マルコスは何かを言おうとしているようだが言葉になっていない
一体どうしたというんだ?
俺は意を決して冷蔵庫の中を覗き込んだ
・・・空だ
「七面鳥が・・・七面鳥がなくなってる!」
マルコスが叫んだ
「は?」
俺は唖然とした
「最終日のサプライズメニューだったのに・・・」
マルコスはかなり落ち込んでいるようだった
どうでもいい
まてよ?
この七面鳥とカンの失踪は何か関係があるのでは?
まさか・・・
カンのやつ七面鳥を持ち逃げしたのか?
いやまて、直木ならまだしもカンがそんなことをするか?
ありえなくはないか・・・
いやでも・・・
俺がそんな推理をしていると直木の怒鳴り声が聞こえた
俺は直木の部屋のある二階へ向かうと自室のドアの前で直木が怒鳴っていた
「おいマルコス!なんだよこの部屋!水浸しのあとは異臭か!?」
集まってきた皆も思わず鼻を覆っている
なんだこの臭いは?
「お前の汗の臭いじゃねーの?」
西村が直木を挑発する
「何だと!?」
直木が西村を睨みつける
「まあまあ、落ちつけよ、空気を入れ替えればいいだけだろ、お前の部屋には最適な仕掛けがあるんだから」
そう言って直木の部屋の天井を開けた希はその場で気絶した
何故なら開かれた天井からは血だらけになったカンが落ちてきたからだ
森間のようにあのマスクを顔につけながら・・・
俺は腹の底から何かが込み上げてくるのを感じた
これは怒りか?
悲しみか?
哀れみか?
いや違うこれは・・・
「ゥボロロロロロロロロロロロロ」
下岡がゲロりさらにこの場の異臭を悪化させた
やれやれだ
「死体の処理はマルコスに任せよう、下手にいじらないほうがいい」
俺はそう言うと気絶した希を抱えロビーへ運んだ
「西村・・・俺らどうなるの・・・?」
高山が不安そうな顔で見つめる
「さあな」
俺はそう言うと考えた
あのカンがやられたとなると敵は相当な切れ者だ
俺は何かを感じカンの乗っていた天井の上を調べることにした
皆は食堂に集まっているから安全だしな
俺は屋上へでると直木の部屋の上を探した
血の跡があったので場所はすぐに分かった
この出血からしてトドメはここで刺したようだな
こんな所に置いたということはすぐに発見されることを狙ったのか?
そうならなぜ田熊の死体は見つからないんだ
まさか、本当に田熊が・・・?
「ん?」
そのとき俺は何かを見つけた
これは・・・ダイイングメッセージか!?
V V
小さくVという字が2つ書かれているようだった
血で書かれていることからもカンが書いたということは間違いないな
これが意味することは一体なんだ?
そのとき天井が、いや床がいきなり開き始めた
「うおっ」
俺はバランスを崩し危うくカンのように落下しそうになった
「何だ?」
部屋を覗くと誰かが走り去るのが見えた
「待て!」
俺はそういうと急いで直木の部屋の前に走ったが既に誰もいなかった
俺を殺そうとした・・・
俺がロビーへ戻ると皆集まっていた
俺がキッチンを見るとマルコスがちょうど昼食を運んできたところだった
一体誰が俺を・・・?
席を立ったものはいないようだ、やはり田熊・・・
俺はそう言うと席について食事をしたが何か違和感を感じた
希も同じことを思ったらしい
「何か・・・この飯いつもと違うな・・・」
この違和感は一体?
「Vが2つ・・・か」
西村が見つけたのは間違いなくダイイングメッセージだろう
俺は部屋に戻ると西村が食後に話したことを思い出していた
田熊がいない部屋か・・・なんだか寂しい気がするな
俺は気分転換に顔を洗って髪の毛をセットすると外の空気を吸いに行った
あのボート乗り場を探索してみよう
何か見つかるかもしれない
俺が玄関を出るとそこには下岡がいた
「おう希、お前も気分転換か」
「はい」
俺は誰も信じられなくなっていた
こいつが犯人かもしれないんだ
探るような眼で下岡を見ていると下岡が言った
「気分転換もいいが、まずはそのボサボサの頭をなんとかしろ」
俺はそれをシカトするとボート乗り場へ向かった
しかし何も見つからなかった
それもそうか
あの嵐だ
証拠なんて全部流されてしまっているに決まっている
俺が引き返そうとした時岩陰に何かを見つけた
「ん?こ、これは・・・」
田熊の学生証だった
田熊はここに来ていたのか
何故これがここに・・・?
「ま・・・まさか田熊・・・」
俺の頭に嫌なシナリオがよぎった
あいつはここで殺されて海へ・・・
いや、そんなはずはない
あいつは生きているに決まっている
そうに決まっている
俺はそれから部屋へ戻るとベッドへ倒れこんだ




