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エッセイ

紙切れ一枚

作者: 菱屋千里

かぐつち・マナぱさまの『「けっこん」って何だろう?~結婚について意見を述べたり聞いたりしたいエッセイ~』を拝読して、このエッセイを書きました。

 心温まるエッセイを読みました。結婚を「プロセス」「選んだ後の歩き方」「選び続けること」と表現する、その言葉に心を動かされました。私も結婚について、自分なりに考えてみたくなりました。


 年配の方と話していると、よく「お子さんは?」と聞かれます。「いません」と答えると、まるで地雷を踏んだかのように「あら、ごめんなさい!」と謝られる。独身だと分かると、さらに恐縮されてしまったこともあります。これ、そこまで謝るようなことでしょうか。


 病院で手術の同意書にサインできるのは「家族」だけ。会社の慶弔休暇も「家族」が対象。長く連れ添った相手でも、紙切れ一枚がなければ他人扱いです。


 日本は本当に結婚前提で回っています。


 でも統計を見ると、3組に1組の夫婦が離婚しているそうです。それなのに、今日もどこかで「永遠の愛」が誓われている。永遠って、本当に永遠でしょうか。不確かなものだからこそ、わざわざ誓う必要があるのではないでしょうか。


 昭和の中頃まで、お見合い結婚が主流だったと聞きます。それがいつの間にか「愛し合う二人が結婚する」のが当たり前になった。でも世間の夫婦はみんな本当に愛し合っているのでしょうか。お金、世間体、老後、子ども。それらが「愛」に混ざり込んでいることはないでしょうか。


 結婚すると「もうこれ以上の恋愛はしませんよ」と表明したことになります。結婚相手を安心させることができ、望まない相手との面倒を避けることもできます。ただ、この「永遠」の約束を破ったとしても、慰謝料の相場は300万円。個人的にいろいろ思うことはありますが、現実的には車を買い替えるくらいのことらしいのです。


 だから、永遠の愛なんて信じていません。そんなの頭の中で考えた理想にすぎないからです。死ぬまで破綻しなかったら、「結果的に」永遠だったと言えるというだけ。


 でも――。


 そんな私も結婚はしているのです。それも一回じゃない。

 結婚したのは、二人の関係を育てるためです。


 もちろん、法律的な制度と二人の関係は別物です。いい関係は結婚してもしなくてもいい関係。悪い関係は結婚してもしなくても悪い関係。


 例えば、私は浮気しないし、相手にもしてほしくない。でも、他の夫婦が互いの浮気を認めていたとしても、それは彼らの選択。本人たちが納得しているならそれでいいと思います。制度と二人の関係は別ですから。


 だけど、夫婦であると思うことが、関係を深めることもあります。大変なことを乗り越える支えになることもあります。


 それに、実生活でも手続きが便利になるというおまけ付き。手術の同意書にサインできる。慶弔休暇が使える。「夫婦です」の一言で済む場面がたくさんある。紙切れ一枚ですが、その紙切れが時に大きな意味を持ちます。


 何より、お互いの関係がはっきりする。それだけで、相手がもっと近くに感じられるようになります。


 結婚に夢は持ってないけど、希望は持っています。

 ――いつか、『永遠』になってくれるかもしれないでしょ?

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