琥珀君を攻略するには?
「お母さんが心配してるって」
「ああ、あの人がね」
琥珀君と翡翠君は、従兄弟であるけれど。
実の母親は同じであるという。
たぶん、さっきから《《兄貴》》って言葉に違和感があった方もいたことだろう。
母親の姉に引き取られたのが、琥珀君。
そちらは、放任主義で。
そちらに変わって産みの親である翡翠君のお母さんが心配をするようなのだ。
しかも、なかなかの癖が強い。
だから、翡翠君のハッピーエンドもかなり難しく。
翡翠君の人気が下から数える方が早いのは、この癖が強い母親のせいなのだ。
琥珀君の方は、母親は別の人だから。
そちらが許せば関係ないところがある。
「ルームシェアの相手どんな人かって」
「あの人変わってるよなーー。俺を差し出したくせに、心配するとかおかしすぎ」
「それは、何か事情があったんだと思う。心配はするよ。母親なんだから」
「母親って。ただ、血が繋がってるだけだからな」
琥珀君は、この話題が嫌いだ。
どうにか話を変えないと。
翡翠君とのハッピーエンドになってしまう可能性があがる。
「そうなんだーー」
ここは、こんな感じで流して話を終わらせてしまおう。
「なに!興味なかったわけ」
「えっ、ちがっ」
「そうだよなーー。お前にとって、俺の母親の話なんてどうでもいいもんなーー」
いやいや。
何でこうなるんだよ。
「ごめんなさい」
「何で謝るの?」
ここは、何の言い訳もせずに素直に伝えるのが一番だ。
もう、どうにでもなれ!!
「琥珀君。お母さんの話するの嫌かなって思って」
やっぱり素直過ぎたか?
うわーー、困ってる。
沈黙が長い。
どうしよう。
他に何か話すこともない。
「おっ、お皿片付けるね」
立ち上がった瞬間だった。
「俺の事心配してくれてありがとう」
琥珀君は、私を自分の元に引き寄せて抱き締めて言った。
ああーー。
今、めちゃくちゃ叫びたい。
家でゲームやってるなら、絶対叫んでる。
言い方古いかもだけど、キュンキュンするよ。
とまらないよ。
やっぱり、琥珀君の攻略は一番ときめく。
「ううん」
「まあ、お前にしては優しいとこあんじゃん」
このまま甘々展開と思いきや。
またもや、突き放された。
やっぱり、琥珀君は難しい。
「こっ、琥珀君だからだよ」
とりあえず、ぶっこんどこう。
「プッ。何それ?意味わかんねーー」
そう言いながらも、何か笑ってる?
喜んでる?
いや、めちゃくちゃ感情読み辛いわ。
「お皿片付けるね」
「しゃーないから手伝ってやるよ」
「あ、ありがとう」
「どういたしまして」
トレーにお皿を乗せてキッチンに持っていく。
そういえば、私って琥珀君が好きな服を購入してたっけ?
わたラブ攻略には、洋服、小物、家具などのアイテムも重要なのだ。
「俺、シャワー浴びてきていい?」
「あっ、うん」
「悪いな、今日は早めに寝たくて。あっ、晩御飯担当、今日はお前だからな」
「わかってる」
もう、16時半。
時間が早く感じられる。
智といた時は、一日が長かった。
長いのは長いので、めちゃくちゃ疲れるんだよね。
いつ帰ってくるのか心配ばっかして。
浮気してないのかなーーとか、綺麗な女優さんとご飯食べてたりしてとか。
いつも余計な事ばっかり考えていた。
「俺がいない時に泣くなよ」
ーーえっ?
まさかのバックハグ。
しかも、たぶん。
上半身裸?
「な、何で?」
「冷蔵庫の水取りに来た」
「あっ、そう、そうなんだ」
「緊張してるのか?何か、体熱いぞ」
「い、い、いやいや。そんな事はなくて」
「バーーカ!冗談だっての。じゃあ、風呂戻るわ。あっ、裸見んじゃねーぞ」
「み、見ないよ」
「なら、よかった」
いやいや。
めちゃくちゃドキドキした。
女性がされたいことをたくさん琥珀にはさせるつもりですって原作者が言ってたけど。
あれは、本当だ。
しかも、現実世界になんかあんまりいないじゃん。
まあ、そこがいいんだよね。
智と住んでる時。
お皿洗いながら泣いてたけど。
智は、寝室でグーグー寝てたし。
現実なんかこんなもんだねって諦めていた。
結婚するまでは、些細な変化も感じ取ってくれたのに。
いやいや、もう智のことは忘れよう。
【アップデートがあります】
ーーんっ?
どうやら、わたラブのアップデートがあるらしい。
やっぱり勝手に詳細を見るが押される。
誰かが操作しているのだろうか?
詳細が映し出された。
な、な、何ーー。
声を出しそうになって、口を塞ぐ。
わたラブの最後は婚約者になって終わりだったのに、今回のアップデートで結婚まで出来るのだという。
しかも、結婚生活を送る事も可能になるらしい。
まだ、こちらは後でアップデートされるらしいが。
って、そんな事より。
一番驚いたのは!!
【あの憧れの芸能人とも恋愛できる?】の文字だ!!
順次増えていく芸能人のラインナップを見て、私は驚いている。
だって……。