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【バッドエンド】現実世界

「さ、智」



 帰ってこないと思っていた智が帰ってきた事に驚いていた。



「わ、私。別れないよ」

「ただいま、凛々子」

「は、離して」

「すごっ、何このドレス。綺麗だね」

「や、やめて」



 もしかして、さっきのはドラマの番宣?

 あれは、嘘だったの?



「凛々子、しよっか」

「えっ?何で」

「いいじゃん、いいじゃん。俺達夫婦だろ?」

「それなら、別れないよ」

「いいよ」


 よかった。

 やっぱり、さっきのは番宣だったんだ。



ーーガチャ。



「智」

「れ、麗香」

「何してんの?」

「何って、この女が別れてくれないって言うからさ」



 智にドンッと体を押されて尻餅をついた。




「あんたさ」



 バタンと扉が閉まると同時に麗香は大きな声を出した。



「不倫相手の分際で、何言ってんの?」

「不倫相手じゃありません。私は、智の妻です」

「はあーー?頭おかしいんじゃないの」

「麗香、お腹の赤ちゃんにさわるから」

「だったら別れなさいよ」

「別れない」


 私の言葉に麗香は怒り、髪を掴んでくる。


「痛い……やめて」

「死ねよ!」

「や、やめて……」



 首に手をかけられる。


「麗香、それはさすがにやりすぎだよ」

「ゴホッ、ゴホッ」

「こんなのマスコミにバレたらどうするの?さっさと別れてよ」

「わかった、わかった。ちゃんと話をするから」



 智は私を見つめると「別れてくれ」と言った。

 



「いやです」

「まあ、別に。籍入ってないから、お前に権利はないから」

「智」

「今まで、結婚ごっこできて楽しかっただろ?」

「ごっこ……?」

「Win-Winの関係だったわけじゃん。そっちだって気持ちよかっただろ?」

「ふざけないで!復讐してやる。マスコミにリークしてやる」

「復讐ってあんた馬鹿なの?復讐するのは私の方。マスコミに流せばあんたの人生が終わるのよ、不倫相手さん」



 麗香は、私に勝ち誇った目を向けて笑った。



「帰ろう、麗香」

「わかったわ、智」



 どうして後からやってきたあんたに私が負けなきゃならないのよ。



「智」


ーーバタン


 大きな音を立てて扉が閉まる。



 どうして?

 何で?

 智と私は夫婦なのよ。

 

 何で?

 何で?

 あの女が急に奪ったのよ。


 籍が入ってないって何?

 智が出しとくって言ってたよね。

 

 どうして?

 この物語は、どう考えてハッピーエンドでしょ?

 だって、智はようやくスターへの階段を登り始めたんだよ。

 長い間支えてきたんだから。

 一緒に、その夢を見ていくんじゃなかったの?

 何で?


 涙で視界が滲んで歪む。

 洗面所でドレスを脱いで、髪をほどく。

 ぐしゃぐしゃなメーク。

 汚い髪型。

 現実世界に私を助けてくれる王子様やヒーローなんてのはいない。


 現実の私は、一人で悲しみに震えるだけだ。

 ドレスを脱ぎ捨てて、適当にTシャツを掴んでキッチンに向かう。

 窮屈にだった体が楽になって、息をまともに吸えた気がする。


 冷蔵庫を物色してビールを取り出す。

 私の人生を台無しにしやがって、ふざけんな!


 ごくごくと喉を鳴らしながらビールを飲む。



「あーー、うわーー、ヒック」



 悲しい。

 悲しい。

 悲しい。


 あんなに言われたのに、今もまだ智が好きなんて。


 苦しい。

 悲しい。

 

 どうして。

 こんなことになったの?

 どうしたら戻れるの?

 智に出会わなければよかった。

 ハッピーエンドだって信じてたのに……。


 フラフラと立ち上がって、ビールをとって。

 ベランダに向かって歩いていく。


 ベランダに置いた椅子に座って、私と智は夢を語り合った。

 もしかして、そこに座ったら。

 智が戻ってきたりしない?



ーージジジジ。

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