七分咲き
三年生に上がる頃ずっと不登校になっていた小林アヤが学校に姿を現した。クラス替えがあったためアヤとその取り巻き達はバラバラになり、僕とタクトはミナと同じクラス。別クラスで不登校だったアヤは僕らのクラスに姿を現した。屋上に来い。そう言い残し去っていたそう。ミナは少し不安そうに何かあったら頼むと僕に言い、屋上へ向かっていった。もちろん止めたが彼女もケリをつけたいといって聞かなかったため、タクトに声をかけ一緒に向かった。だが、その時のタクトの瞳はどこか恨めしそうな瞳をしていた。でも今はそんなことよりミナが心配だ。屋上に向かい入り口で様子を見る。春とはいえ溶けかけの雪とまだ冷たい風が吹いている。二人の緊張感により屋上の体感温度はより低く感じる。声は少し聞こえてくるが、ところどころ聞こえにくい。冷静に話し合いをしているかのように思えたが、アヤは唐突に声を荒げミナに掴みかかった。怒りに体を乗っ取られた人間の力は底知れない。僕らは急いで止めに入ろうと走り出したが、一歩間に合わずミナは運悪く錆びついていて脆くなった柵に押し付けられ、僕の視界から消えてしまった。伸ばした手は空を切り、彼女に届かなかった。
気が付いたら俺はリュウキと一緒にベッドに横たわるミナを見ていた。屋上から落ちたミナはそのまま落ちたが下に生えていた桜の木とそこに積もった雪のおかげで命に別状はなかったものの半身麻痺が残ってしまった。突き落とした犯人のアヤは自身のいじめにより両親から突き放され精神が崩壊し、ミナを突き落としたとして今は精神病棟に入院している。両親はこれは自分たちの責任だといい、ミナに多額の慰謝料と治療費を全額負担したらしい。事件から三日後ミナは目を覚ました。だが、彼女が僕を見ることはなかった。彼女たちの話し合いの一件から俺はもう誰も失わないと、ミナを失わないと心に決めていた。でも、俺はおじさん、ミナの父親が亡くなったとき何も言えなかった。だが、リュウキは違ったみたいだ。そしてミナもリュウキを選んだ。僕は選ばれなかった。また。自分が情けなくなった。だが、恨めしくもなった。小さいころからそばにいた俺より。気まぐれで声をかけたリュウキに惚れるなんて。俺は確かに他の子と付き合っていたが今はもうミナしか心に無い。でもそう気づいた時には遅かった。ミナはリュウキに夢中になっていた。リュウキは俺にとって親友だった。でも、もう終わりだ。ミナが目を覚ましてからリュウキは献身的にサポートしていた。左半身が不自由になったミナを支えたり歩くのを補助したり。俺の付け入る隙は無かった。どうにかしてリュウキを消したい。俺にとってリュウキはただの邪魔者だった。




