展葉2
気が付くと葬式は終わり高校生の私を親戚はどうするかを話し合っていた。私はあの家で一人で大丈夫といい、親戚も引き取るのが難しいため定期的に親戚が様子を見に行くことになっていた。幸い金銭面は父親が残してくれたものでしばらくはやっていけそうだった。父親が遺したものは遺産と遺書。そして、両親の結婚指輪だった。遺書は私への謝罪で溢れていた。
ミナへ
ミナを遺して先に逝ってしまう父さんをミナは許してくれなくていい。自分勝手な父親で迷惑ばかりかけてすまなかった。きっとあの世でカナに怒られているだろう。だが、これ以上父さんのせいでミナに迷惑をかけたくないんだ。父さんはカナとミナの違いが曖昧になってきていることに気が付いていた。それほどミナはカナそっくりで、正義感の強い自慢の娘だった。父さんのせいでミナがいじめられている事実を知って父さんは胸が押しつぶされてしまった。辛いのはミナなのにすまない。わかってくれともいわない。でも、もう強がらなくていいんだ。ミナは自分の気持ちに素直になって弱い自分も受け入れて、誰かと幸せになってくれ。空からミナを見守って幸せをいつも願っている。カナを守れなくてすまなかった。愛しているよ永遠に。
葬儀が終わり家に帰る途中タクトに会った。父親が亡くなったのを聞いて心配で会いに来てくれたのだろう。私は…タクトが好きだった。でも今はもう全てがどうでもいい。目に見える物全部が色あせていて世界がつまらなかった。タクトは心配そうにミナを見つめるが何も言えずミナは家に帰っていった。冷たくなったリビングで一人ミナは両親の結婚指輪にチェーンをかけネックレスにしてぼーっと暗闇を見つめていた。その時家のチャイムが鳴り響いたがミナは無視を続けた。
父親が亡くなったと聞いて思わず家に来てしまったが、チャイムを鳴らしても返事はない。リュウキはもしかして部屋でミナも…と思い思わずドアに手をかけるとカチャと抵抗なくドアが開き家の中に駆け込みミナ!!とリビングへ向かうとそこには真っ暗な部屋の中に一人の人影があった。携帯のライトで照らすと現れたのは真っ黒な闇に染まった瞳をし、髪が金髪に近い色で輝いているミナの姿だった。リビングの電気をつけると部屋が明るくなりミナは眩しそうに目を細める。
「不法侵入とはいい度胸ね。」
そうミナは冷たく言い放つ。
「チャイムは鳴らしたんだけど、返事がなくてもしかしたら桜井も…と心配に…すまない。」
ミナはふっと小さく鼻で笑うとリュウキを見つめて質問をした。
「私は死にそうに見える?」
そう問われリュウキは思わず少しだけと答えるとミナは笑って続けた。
「私には自殺をする度胸なんてないよ。父さんの違和感にも気づいていたのに私は気づかないふりをした。見殺しにしたんだ。私も、母さんを殺した犯人も変わらない。目の前で両親を失くす私は死神だ。」
そう自嘲しているミナを僕は思わず抱きしめてしまった。腕の中でミナは抵抗することなくおとなしくしていた。表情はわからないがミナの生きている証拠がとくんとくんと体を通じて感じるのは確かだ。
少し時間が経ち、ミナの顔を覗くと顔を少し赤らめ、瞳は桜が少し芽吹いたような暖かい瞳をしていたが、どこか少し寂しげだ。その寂しさは両親を失くした寂しさか、目の前にいるのがタクトではなく僕だからなのか。確実なことはわからないが、求められているのが僕ではないことは確かだ。そんなことを考えているとミナが口を開いた。
「私はきっと君に甘えているだけだよ。橘君だからじゃない。たまたま目の前にいたのが君だからだ。私はもう誰も失いたくないし傷つきたくもない。だから私の前に現れないでくれ。頼む、優しい君を壊したくないんだ。」
そういわれ僕は思わず笑みを溢してしまった。僕はミナを思って行動するようなできた人間じゃない。ただ君を自分のものだけにしたい自己中心的な人間。そんなことを考えていたら、思わず口が動いてしまった。
「僕は優しくなんてないさ。もし君が死神ならそんな君に惚れて口説こうとする僕は悪魔かな。僕を好きなだけ利用してよ。その代わり君の全てを僕にくれないか。」
なんとも変な告白だが彼女の瞳は満開の桜を咲かしているような煌びやかな光が差し込んでいる。
君はおかしな人だね。そういうと彼女は部屋からあるものを持ってきて僕に渡した。
「これは…毛染め?」
「そう。今まではストレスで色が抜けるのを気にしてなかった。でも、私も前に進まないとね。父さんも母さんも心配で成仏できないでしょう?それにこんなに変なタイミングで真っ直ぐにされた告白を無下にしたらバチが当たりそうだし。」
そういいながら笑う彼女はやっぱり強い人だ。そしてそんな彼女が僕を選んでくれた。そんな気がして胸の高鳴りを抑えることができなかった。父親の葬式が終わった日の夜。彼女の髪は綺麗な夜空のように黒く染まり光を反射していた。目つきは学校では相変わらず鋭いが僕を見る瞳はとても優しく暖かい目を向けてくれる。やっと彼女が僕だけを見てくれる。タクトは眼中に無く僕だけを。あの春の桜のような暖かい瞳に写るのは僕だけだ。
そんな暖かい日常を過ごしていたらあっという間に二年生が終わり、三年生に上がろうとしていたが。彼女のことを忘れていた。あの日話し合いの場を飛び出した彼女を。気が付いたら彼女は学校に来なくなっていた。だが、再びアヤはミナの前に現れた。




