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桜颪の中へ  作者: 小藍
2/4

発根1

5時間目の始まりを教えるチャイムが鳴り響く。

クラスの隅の席に先程の女子生徒、桜井の姿が見える。顔は相変わらず無気力な顔をしているが、目はしっかり教師を捉え、ノートもきちんと取っている様子だ。その姿は問題児には見えず、ただの真面目な生徒にしか見えない。例のグループの女子生徒達のほうがよっぽど問題児だ。ヒソヒソ話しをしている様子や、メモを渡し合っている。教師はそれを見てみぬ振り。ここの学校の教師は面倒事を避ける者が多いようだ。いじめに関しても、相談は受けていただろうに動かなかった。だが、桜井が暴力沙汰を起こしてしまったため対処せざるを得なかった、そんなところだろう。そんなことを考えていたらあっという間に授業は問題なく終わり教師が去っていった。その瞬間ある声が響いた。

「ねぇ。なんでまだ学校にいるの?おかげで私の顔に傷がついたんだけど。」

そう文句を響かせたのは例の女子グループのリーダー的存在の小林 アヤ。

文句を言われた当の本人の桜井は完全に無視を決め込んでいる。周りの生徒は触らぬ神に祟りなしといったところだ。

そこに野次を飛ばしているグループの他の生徒。

先生を呼びに行ったほうがいいのか相談をする生徒。興味本位で見続ける生徒。しかし誰も助けようとはしない。

そんな姿を呆れていたタクトが僕に囁く。

「助けなくていいのかよ?リュウキ。次期生徒会長としてさ。うちのクラスで問題起こされたら困るだろ?」

確かに、次期生徒会長が決まっている現状、問題を何回も起こされると評判が傷つくかもしれない。先輩が卒業するまで一か月も残っていない。だが、目の前で揉め事が起こるのも気分が悪いので止めようと席を立とうとしたその時。

桜井が口を開き言い放った。

「一人を多数でいじめる。理解できないね。鏡を見たことある?見たほうがいいわ。私が殴ったおかげでまだマシだけど、あんた相当醜い表情してるから。」

それじゃ。と言い放ち教室を出ようとしたとき、小林が桜井につかみかかろうとした。だが、その手は届かずリュウキの手によって止められた。

「小林さん。それはよくないね。僕のクラスで揉め事はよしてくれるかな?」そう言うとリュウキはニコッと小林を見た。そんな姿を見た取り巻きは頬を赤らめぼーっとしていた。当の小林は顔を真っ赤にし、別に揉め事なんて…とモジモジしだし、でも橘君がそういうなら…と上目遣いをしている。そんな小林をリュウキは笑顔のまま心の中で軽蔑していた。そして桜井のほうを向くともう姿がなかった。廊下に出て辺りを見回しても、気配すら残ってなかった。桜井を探すリュウキをタクトは何か確信したように見ていた。

リュウキは先ほどの桜井の凛とした姿を思い浮かべ胸が高鳴っていた。

その後、六時間目のチャイムが鳴り授業が始まると桜井が席に戻ってきた。

教師が遅れるなよーと軽く注意するとはい。と小さく返事をした。いつも通りの無表情なのにどこか悲しそうな辛そうな顔をしていた。

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