仲間想い
「フレッド……お前をパーティーから追放したいけど、追放しない!」
「はあ?」
リーダーのジャンから酒場に呼び出された僕は困惑した。
この状況は一体なんなんだ……?と。
「実は俺、パーティーの中に好きな人がいてさ……」
……ああ、そういうことか。
男女混合の冒険者パーティーにはよくあることだ。
苦楽を共にし、親睦を深めるうちに恋愛感情が芽生えてしまったが、
それが原因で仲間同士の関係性に亀裂を生じさせたくない。
だが表向きは異性との絆よりも同性との友情を大事にしたい。
ジャンは今、そういう状況にあるのだろう。
「……僕はべつに、シャローナには興味ないから安心してくれよ」
「俺も興味ない!」
「はあ?」
「俺はボブが好きだ!
でも、ボブはお前を好きなんだ!
だから、俺はボブの幸せを優先することに決めたんだ!」
「そんな、困るよ……」
本当に困るよ。
屈強な戦士ボブ。
同性の目から見ても惚れ惚れするような肉体の持ち主ではあるが、
それは性的な目線という意味では断じてない。
べつに彼らの嗜好を否定する気はないが、僕自身はそっち側の人間ではない。
「その話、シャローナは知っているのかい?」
「ああ、実はシャローナも俺と同じでさ……
彼女とは何度もボブを巡って衝突した仲だけど、
最終的にはボブの気持ちを優先したいと決断してくれたんだ!」
「僕の与り知らぬ所でそんな愛憎劇が繰り広げられていたんだね……
とにかく僕はもう君たちの仲間ではいられないよ
こういうドロドロの恋愛関係が嫌でパーティーを転々としてきたからね」
「そんな、待ってくれよフレッド……!
お前が脱退したらボブは……!」
「……いや、そっちこそ冷静になって考えてくれ
僕が抜ければ、君たちにとってのライバルが1人減るんだろ?
あとは君たち3人でどうにか納得できる答えを見つけるべきだと思う」
「フレッド……!」
そして僕はジャンのパーティーから脱退した。
その後、屈強な戦士ボブが追いかけてきた。