63話:辺境伯領に戻ります!
王宮のテラスでのディナーは最高だった。
婚約指輪を贈られ、アレク自身も婚約指輪を着け、そして私の刺繍入りの白手袋をとても喜んでくれた。義父となる国王は父親を押え、アレクとの抱擁もできたのだ!
でも父親は帰りの馬車でしょんぼりしていた。その一方で母親が明るく話し、おかげで重苦しい雰囲気にはならずに済んでいる。ただ、父親が心配してくれる気持ち。それはよく分かっている。
アレクは完全無欠の王太子様。この世界の未婚令嬢の心を、メロメロにとかす存在なのだ。そしてここ、乙女ゲームの世界においてアレクは、乙女をドキドキさせる攻略対象でもある。抗えない魅力にあふれていることは……言うまでもない!
そのアレクが私のことを大好きなのだ。そして私もアレクが大好き。そうなると若い二人の間で、いろいろと婚姻前に起きてしまうのではと、父親が心配する気持ちは……理解できてしまう。
それに2度のループでの人生で、父親がこんなにクリスティに関心を持ち、心配し、溺愛することなんてなかった。それを思うにつけ、今の父親は……。
過保護だって構わない。溺愛してくれているのだから!
そして父親も冷静になると、分かっていると思うのだ。
アレクがどれだけ魅力的であり、私を好きだとしても。
父親が心配するようなことを、するはずがないと。
師匠と弟子として、父親とアレクの間には、師弟関係の絆ができている。かつ父親が自身のことを「師匠」と呼ぶのを許しているのは、基本的にアレクだけだ。一応、自身が領地へ呼び出したこともある。よってデュークにも師匠と呼ぶことを許しているが。こちらはあくまで暫定的なもの。
そして父親はこれまで、誰かを弟子と認めたことがなかった。それなのにアレクに「師匠」と呼ぶことを許し、弟子と認めているのだ。アレクの人となりを信じているに違いなかった。
それでもアレクを牽制したくなるのは……。
やはりアレクがあまりにも魅力的だからだろう。
何はともあれ。
アレクの配慮により、ヒロインと遭遇することなく、王都での滞在を終えた。
滞在中、婚約式のドレスの採寸とオーダーも済ませてある。王室御用達のブティックなので、婚約式に絶対に間に合わせてくれることになっていた。婚約式の一週間前に再び王都へ戻るので、そこで試着。すぐに直しをして、完璧に仕上げることになっていた。アレクの衣装も同じだ。
さらに招待客リストの確認も済み、既に発送まで済んでいる。さすがその道のプロ。侍従長たちは、仕事が早い&完璧! 婚約式の昼食会のメニューの提案もあったが、それはもう文句なしで美味しそうなものばかり! アレクと二人で確認し、提案のメニューでいくことになった。
この時点で、婚約式に関する不安はなし。
急ぎで何かあれば、伝書鳩も飛ばせる。
何よりも侍従長が率いるプロフェッショナルチームはとても優秀。
安心して婚約式の準備を任せられると感じていた。
つまり領地へ戻っても、問題なく婚約式の準備はできるということだ。
こうして王都を出発し、アイゼン辺境伯領へ帰ることになった。
アレクもデュークも。
辺境伯領に戻ると、おめでとうございます!のラッシュだ。
領内に入り、城までの最短ルートを進み、遂に街中へ入ると。
紙吹雪と声援と花束で迎えられ、街はお祝いムード。
「クリスティ。これは王都よりも大騒ぎだね」
「私も驚いているわ」
新聞社からの取材も受け、芸能人のように婚約指輪を披露することに。
「殿下、できれば婚約者の頬にキスをし」
「君、殿下に対し、何を言っている!」
「へ、辺境伯様! も、申し訳ありません!」
王都以上に熱狂的に迎えてもらえるのは、領民からすると、「我々の領地から王太子妃が誕生する!」と嬉しいからだろう。
ともかく領地に戻ってしばらくは、大変だった。
それでもバタバタした日々は落ち着き、日常が戻ってくる。
バカンスシーズンであるが、アレクとデュークは毎朝剣術の練習に来て、終わると一緒に朝食を楽しむ。その後はデュークと三人、勉強をすることもあれば、出掛けることもあった。例えばこんな風に。
「王都で人気のオペラ。辺境伯領の歌手たちで上演するらしいぞ。観に行こうよ、クリスティ。勿論、殿下も!」
「デューク、いい提案だわ! 行きましょう、殿下!」
「いいよ、クリスティ。行こう、三人で」
デュークは別にアレクと私を監視するわけではない。ただ父親が「二人でデートに行くなら、侍女を必ず連れて行くように。もしくはデュークを誘い、三人で出掛ければいいではないか」と言うのだ。
父親の過保護ぶりが発揮された結果。
デュークは結局アレクと私のデートに、いつも顔を出すようになっていた。
三人でのデート……デートというより、三人で遊びに出掛けているのだけど、これは普通に楽しかった。
婚約する前のアレクと私は、微妙な距離感があったと思う。私が一線を引いていたせいもある。でも今はそんなこともなく、垣根がなくなった。よって三人で過ごす時も、お互いに打ち解け合っている。
「殿下がチョコ味にするなら、自分はプレーンだ。クリスティはストロベリー味でいいんじゃないか?」
「デューク、それはつまり交換しながらいろいろな味を楽しむのね?」
「そう。クッキーだから枚数はある!」
「名案だ、デューク。そうしよう。クッキーを食べたら野外音楽堂へ向かおう」
こんな会話も気兼ねなくできた。
外出先で昼食を摂れば、冗談を言ったり、笑い合ったりする。
観劇したら、どんなところが良かったか、どこがあと少しだったかを話し合う。
演奏会を聴いたら、感想をお互いに言い合ったりしていた。
こんな楽しい時間を街で過ごし、夕食までにはちゃんと屋敷へ戻る。
日により、アレクも一緒に屋敷で夕食を摂ることもあった。
そんな日々から数日後。
クラスメイトから釣りに誘われた。
お読みいただき、ありがとうございます!
今年もそろそろコンテストで動きが!
活動報告と大変地味に存在している例のX(twitter:@1starkirari)で報告しています。読者様の応援に心から感謝です☆彡


















