61話:王宮の夜のテラスで……
夜の博物館・植物園・動物園デート。
ただし、アレクとは二人きりではない。まさかの両親同伴、デュークまでいるけれど!
もう毎日夜が来るのが楽しみでならない!
王都では様々な貴族が舞踏会や晩餐会も開いているので、そこは招待客を念入りに確認し、ヒロインが来ないと分かったものだけ、顔を出すようにしていた。
でもそれは両親と共に出席が多く、アレクはいない。
そんな時アレクは普通に宮殿で公務をしていた。
きっとアレクは私に会いたいと思いながら、公務をしているのだわ……。
そう考えると、不憫でならない。
社交も大切だけど、私はアレクも大切にしたい――。
そう思っていた矢先に届いたのは、王宮のテラスでのディナーのお誘い!
なんと国王陛下夫妻も同席されるという。
そうなると両親も当然、出席となる。
完全に息子と婚約者、そしてその両親と私的にディナーを楽しむということで、今回デュークは参加しない。
そして私的なディナーというが、その相手は国王陛下夫妻と王太子。
父親はダークシルバーのテールコートで、母親はシャンパンゴールドのシックなドレス。私はアレクがアイスブルーのテールコートを着ると教えてくれたので、白の生地にアイスブルーの刺繍やレースが飾られたドレスで出席することにした。
ということでやってきました!
王宮です。
王宮の庭園に面するテラス。
王宮の庭園といえば、婚約式を行う場所でもある。
実際にアレクのエスコートでテラスに到着すると……。
大きな噴水があり、とても涼しい。
噴水の周囲の木々にはランタンが飾られ、幻想的に辺りを照らしている。
しかもわざわざ楽団を呼び、生演奏させていた。
今回、大きなテーブルに全員で着席、かと思ったら!
国王陛下夫妻と私の両親で一つのテーブル、アレクと私で一つのテーブルだった。
双方の両親がいる。そしてディナーは基本的に着席して動かず、そこで食事を楽しむのだ。アレクと私が同じテーブルで二人きりでも、慣習に反するような悪いことはできない……と思ったのだろう。その結果の二人きりのテーブルだと思った。
どんな理由があっても。なかなか二人きりになれないので、単純に嬉しい!
「では始めるとするか。今日は私的なディナーだ。立場を気にせず、家族として、楽しいひと時を過ごせればと思う。わたしの息子と娘に乾杯!」
国王陛下に“娘”と言われたことに、ドキドキしている。
こうして始まった優雅なディナータイム。
登場するのは、極上の料理の数々。
「クリスティ、じっくり味わって」
「ありがとうございます、殿下!」
ここが王都だな~と感じたのは、普段食べる鹿肉やイノシシ肉と違い、前世で食べ慣れた牛肉や豚肉が登場したこと。アイゼン辺境伯領では、肉の調達は狩りだった。畜産業もそれなりだが、圧倒的に狩りが多い。そうなるとジビエを楽しむことになり、家畜となっている牛や豚を食べる機会はほとんどなかった。
逆に王都には、狩りに向いている森がない。その分、畜産業を営む平民も多い。そして王侯貴族が買い上げ食べているのが牛肉や豚肉というわけだ。
「クリスティ、どうかな? 楽しめている?」
「はい! 味付けが絶妙で、舌が喜んでいます!」
メイン料理までいただいて分かったのは、ソースへのこだわりだ。アイゼン辺境伯領では下処理をしっかりしているので、シンプルな味付け(つまり塩)かハーブを利用し、割と豪快なジビエ料理が多かった。
でも王都で、王宮でいただく肉料理、魚料理もそうだけど、ソースの味が複雑! ソース作りにきっと手間暇をかけていると思った。
「クリスティは南国のフルーツは好きかな? マンゴーというフルーツ。王宮の温室で栽培させているんだ。とても甘くて美味しい。今日はそのマンゴーで作ったタルトとシャーベットがデザートだよ」
「マンゴー! 領地ではめったに食べられません。温室で栽培……屋敷の温室ではヤシの木、パイナップル、バナナで……。マンゴーは育てていません!」
「そうか。ではお代わりもしていいからね」
ウィンクするアレクは素敵&頼もしい!
「お待たせいたしました。デザートでございます。マンゴーのタルト、マンゴーのシャーベットです」
もう完熟して美味しそうなマンゴーが、惜しみなくたっぷり載っている。メイン料理を食べ、かなり満腹だったのに、お腹が「食べたーい」と声をあげている気がします!
ということでまずはマンゴータルトをパクリと食べ「~~~! 甘い!」と相好を崩すと、アレンが笑顔になる。
「良かった。今日の料理のメニューは、料理長の考案したものに、僕のアイデアも取り入れてもらったんだ。例えば鹿肉のステーキを提案されたけど、それは食べ慣れているだろう? だから牛肉のステーキに代えてもらった。タルトもピーチを提案されたけど、それよりもアイゼン辺境伯で見かけないフルーツがいいと思い、マンゴーを指定したんだ」
「! さすがです、殿下! まさに痒い所に手が届く采配です。お見事ですよ!」
ついテンションが高くなり、マンゴータルトを食べる手が止まらない。
「もしかしてクリスティは、マンゴー自体を楽しんでいる?」
「! 実は……そうです。タルトであることより、マンゴーが……」
「了解。任せて」
そう言うとアレクはメイドに、食べ頃のマンゴーを食べやすくして用意するようにと命じてくれた。私はそこで思わず「殿下、マンゴーにレモンを絞ると、美味しさが増します!」と伝える。
「マンゴーにレモン!? あ……そうか。あの酸っぱさが甘みを高めるんだね。レモンを絞るよう伝えよう」
「あ、レモンを縦に半分、それをさらに縦に半分に切ったものを添えていただければ……」
「分かったよ。自分で好きなだけ搾りたいんだね?」
こくこくと頷くとアレクはすぐにメイドにレモンのことを伝えてくれた。
こうしてタルトをもりもり食べ、シャーベットも食べ終え、さらに追加で出てきたマンゴーもレモンを絞り、平らげると……。
「満腹です」
「良かったです」
アレクがふわっと素敵な笑顔を見せたその時。
ヒュウ~~~という音の後に、爆音が聞こえ、フリーズして、声が出ない。
お読みいただき、ありがとうございます!
アイスブルーは筆者お気に入りカラー。
白い氷河に海が映り込み、透明感のある澄み切った水色のイメージで使っています!
そしてやってきました週末。本日から二日間は増量更新ですよ♪
そして地味に、本当に地味に、一番星キラリ(@1starkirari)の名でX(旧twitter)をやっています。
そちらで謎の霜降り肉(?)と共に告知した通り
『悪役令嬢です。ヒロインがチート過ぎて嫌がらせができません!』の第二部がスタートしました!
併読されていた読者様、お待たせいたしました。
ページ下部に目次ページへ遷移するイラストリンクバナーがございます。
ぜひご覧くださいませ~☆彡