56話:いざ、舞踏会へ!
アレクが選んでくれたラベンダー色のドレス。
淡い色合いで優しい印象のドレスだ。
身頃を飾るのは、ビーズで作られたレース。スカートに重ねられたチュールは、グラデーションになるようにグリッターが散りばめられている。上品で落ち着きがあり、私の瞳によく合う色味だった。
メイドに、このドレスに合わせたパールの宝飾品を用意してもらい、ひとまず準備は完了。
その後は両親と共に街へ出掛け、ショッピングをしたり、レストランで昼食を摂ったりした。そうやって散策した王都を見て改めて思ったことがある。それはアイゼン辺境伯の街と、そうは変わらないということだ。結局売られているものは宝飾品だったり、衣類だったり、スイーツだったり、雑貨だったり。多少の流行の違いはある。でもアイゼン辺境伯が極端に流行遅れとは思わない。
そう思うにつけ、二度のループにおいて、あんなに王都に憧れたクリスティは……ちょっと憐れに感じてしまう。どうして辺境伯領の街と王都、そこまで差はないと、気が付けなかったのか。それもこれもゲームの力が作用したのかな……。
何はともあれ、王都のメインストリートにあるお店は、かなり見て回ることができた。既に私の姿絵は新聞にも掲載されているので、お店の人はいろいろとサービスもしてくれる。楽しく散策を終えた後は、屋敷へ戻り、舞踏会へ向け着替えだ。
ということで屋敷へ戻ると、王家の紋章入りの手紙とギフトボックスが届いている。
何かと開けてみてビックリ!
今から着替えるドレスに合わせた、パープルダイヤモンドを使った髪飾り、ネックレス、イヤリングではないですか!
添えられている手紙には「僕の愛する婚約者をお披露目する舞踏会。クリスティが今日の主役になれるよう、これを君に贈るよ」と書かれている。
確かに希少なパープルダイヤモンドをこれだけ使った宝飾品を用意できるなんて、王族だからこそ、だろう。
「ドレスに着替えます。宝飾品はこれを身に着けるわ」
メイドに指示を出し、早速着替えがスタート!
そして一時間後。
ドレスへの着替えは完了。アレクからプレゼントされた宝飾品も、すべて身に着けた。
お化粧はナチュラルに。
チークはふわり、ルージュは優しく。
髪はハーフアップにし、ダンスの時に綺麗に流れるよう、おろしている髪はサラサラにブラッシング。
「クリスティ、準備はできたかい?」
スカイグレイのテールコートでビシッと決めた父親が、バニラ色のドレス姿の母親を伴い、部屋にやってきた。
「まあ、クリスティ! 本当になんて美しいのかしら。間違いなく、今夜のヒロインはあなたよ!」
母親が父親を押しのけ部屋に入り、私の両手を握り、大喜びしてくれる。
「ありがとうございます、お母様。お父様、どうですか?」
父親は目頭を押さえ「美の女神が降臨したようだ」と感動している。
両親二人とも喜んでくれたし、お墨付きをもらえた。
アレクのエスコートで、王族の皆様と入場する。
そのための武装準備は完了。
つまりは勝負服――勝負ドレスと宝飾品でぬかりない。
大丈夫。
何よりアレクがいるのだから。
こうして両親と共に馬車に乗り込み、宮殿へ向かった。
◇
アレクとは宮殿のエントランスホールで待ち合わせをしていた。
本当は屋敷まで迎えに行くと言われたが、アレクは王宮で暮らしているのだ。舞踏会の会場となるホールは、徒歩で行ける場所。それなのにわざわざ屋敷まで迎えに来てくれる必要はないと、お断りしていたのだ。あの時のアレクは「そんな……」と悲しそうな上目遣いで私を見るので、つい「やはり迎えに来てください!」と言いそうになっていた。
アレクが優しいのをいいことに、甘え過ぎてはいけない。
ということで、馬車から降りると。
「クリスティ!」
驚いた!
まずアレクがわざわざエントランスまで出てきていることに。
次に、その姿!
私のドレスに合わせ、ラベンダー色のテールコートを着るのかと思ったら!
なんとロイヤルパープルのテールコートを着ていたのだ。
これはいつもと雰囲気がガラリと変わり、大人っぽく見える。
かつ、私のドレスの色と相性も完璧。
「会いたかったよ、クリスティ……!」
お迎えを我慢していた反動なのだろう。
アレクはつい、私にハグをしようとしたら……。
「殿下、エントランスまでわざわざ出迎えていただき、光栄です!」
お、お父様!
私の代わりにアレクとお父様がハグをしている!
「やっぱり過保護だよな」
声に振り返ると、エントランスにデュークもいた。
「あなた、ホールに向かいましょう!」
母親に声をかけられ、父親はようやくアレクを解放した。
そのアレクは困った顔になりつつも、私と目が合うと、大天使の微笑みに変わる。
「行こう、クリスティ」
私をエスコートして歩き出す。
父親は母親をエスコートし、私とアレクの後に続く。
「殿下、今回も宝飾品を贈ってくださり、ありがとうございます」
「僕はクリスティの婚約者。当然のことをしただけだよ。何より今日のクリスティも、とっても素敵だ。……なんだかみんなに披露するのが心配になるよ。今日、舞踏会に来ている令息は、みんなクリスティに夢中になるだろうね」
「まさか、殿下……!」
そんなことを話しているうちに、会場となるホールへ到着した。
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【第五章完結】一気読みできます!
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