47話:全員ハピエンはこうするしかない?
晩餐会の翌日。
アイリス色のドレスに着替え、庭の朝顔の様子を見に行く。
今日も咲いている。
いい感じね。
先程から聞こえる掛け声に、練習場の方を見る。
アレクはもうかつらをつけていない。
いつものサラサラの金髪で、デュークと共に父親の指導の下、剣術の練習に励んでいる。
「殿下、深く踏み込み過ぎです。もっと距離をとってください!」
「違う、違う。力が入り過ぎています。殿下、肩の力を抜いてください。いつも通りでお願いします」
アレクは何だか力み過ぎで、かつ集中力を欠いているようで、父親から何度も注意を受けていた。それに普段より汗もかいている。
いつもできることができない。
父親の指摘に焦っているようだ。
そんな風にアレクがなってしまう原因。それは……。
私が昨晩、ジュリアスと二人でガゼボにいたからだろう。
彼の私への気持ちが分かっているのに。ジュリアスと二人きりでいるところを見せてしまった。酷なことをしてしまったと思う。
その一方で。
ジュリアスが私に一目惚れした可能性があり、かつ彼と婚約すれば、アレクと婚約しないで済むのかと思うと……。
アレクは王太子であるが、ジュリアスだって第二王子。ジュリアスが私に一目惚れをして、婚約を前提にした付き合いをしたいと申し出た場合。私がそれを受けたとしても、アレクがどうこうするのは難しいはずだ。何せジュリアスはこの国の人間ではない。干渉しにくいはず。
そうなるとアレクに残されたのは、ヒロインとのゴールインのみ。しかも悪役令嬢である私の邪魔は入らない。私は断頭台送りとならず、ヒロインも階段から突き落とされることもないのだ。皆、パートナーができ、ゴールインになる。まさにハピエンではないか。
今のアレクは、私しか見えていない。そのせいで苦しい思いもしている。ゲームの強制力も働き、悪役令嬢である私と婚約しろ!と、見えない圧を感じているのかもしれない。だがヒロインを見たら、気持ちは変わるはずだ。
私への恋心なんて忘れ、すぐにヒロインと恋に落ちる。
だからアレク。今だけの辛抱よ。
そう思うものの……。
朝食の席ではアレクの切なそうな視線と何度も目が合うことになり、それは胸が苦しい。
それでもここで、情にほだされてはいけない。私は三度目のループ、今度こそ生きたいのだから!
朝食を終えると父親から、ティータイムを二人で過ごそうと提案される。私はそれを快諾し、その時間になるまでは、デュークとジュリアス、そして母親と四人で、辺境伯領の宝物庫見学をすることになった。
アレクは用事があると帰ってしまったが、多分、もう苦しくて一人になりたくなってのではないか。そう思うと……私だって……。
ううん。余計なことを考えてはダメ。
アレク=断頭台。
そして私は生きたいのだ。
一旦、頭の中からアレクのことを忘れ、ワイン色のシャツにココア色のズボン姿のデューク、アイアンブルーのセットアップを着たジュリアス、そしてサマーグリーンのドレスを着た母親の四人で宝物庫へ向かった。
辺境伯領の宝物庫。
母屋、離れ、庭園、剣の練習場、厩舎&馬術訓練場、貯蔵庫、鶏小屋、菜園などに加えて敷地内にあるのが宝物庫だ。
そこには初代辺境伯から始まり、歴代辺境伯の甲冑やマントが飾られている。その宝物庫に、ありそうでないのが剣。
特に初代辺境伯が誕生した時代以降、数世代は戦も頻繁にあった。
つまりその時代、剣はまさに日常的に使われ消えて行くもの。そして耐久性を高めた日本刀と違い、西洋の剣はその素材から耐久性がそこまでなく、かつ古い剣は再利用されることもあった。武器が足りないとなれば、リサイクルしていたわけだ。ゆえに展示されている剣は、ここ最近のものが多い。
そんなことも父親は私に教えてくれていたが、それは母親も知っているようで、熱心にデュークとジュリアスに説明していた。デュークは騎士志望だけあり、この手の話には興味津々な様子だ。
そんな感じで宝物庫の中をのんびり進んでいる時だった。
ジュリアスが突然、次の展示室に移動する私を引き留めた。
母親とデュークは、かつての戦乱の歴史について熱く語っており、ジュリアスと私が立ち止まったことに気づいていない。そのまま次の展示室へ入って行く。
遠ざかる母親とデュークの声を聞きながら、私はジュリアスを見上げることになる。
涼し気な眼差しをこちらへ送ったジュリアスは静かに告げた。
「昨日の続きを言わせてください」
これにはドキッとなる。
昨晩、何を言わんとしていたか。
それは分かっていた。
まさか改めてここで言われることになるとは。
心臓がトクン、トクンと大きな音を立て始める。
「クリスティ、君に一目惚れしました。私との婚約を前提にした交際、考えていただけませんか」
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あの反応にはビックリしました~


















