【小話】スターフェスティバル~七夕~
サプライズ更新☆彡
七夕記念の描き下ろし小話を読者様への感謝で特別更新!
カレンダーを見て、「ハッ」とする。
今日は……7月7日。
七夕だわ!
我が家では私が七歳になってから、毎年7月7日を「スターフェスティバルの日」にしている。この世界に七夕の風習はなく、遥か東方のこの習慣は知られていない。でも個人的に私はこの七夕が、とても気に入っていた。
理由は簡単!
給食で七夕ゼリーを食べていたから! あのソーダ味とレモン味のゼリーは、なんというか駄菓子みたいな味で、「とっても美味しい!」というわけではない。でも懐かしい味。思い出に残る味。転生しても覚えていたのだ!
そこで両親に頼み、この日はレモン味とソーダ味のゼリーを作って欲しい。細長い便箋=短冊に願いごとを書き、庭の低木に飾りつけたいと提案したのだ。そしてこの日を我が家の「スターフェスティバルの日」にしたいと。
突然、こんなことを頼んだが、両親は快諾してくれた。
以後、毎年。
7月7日の夕食には、デザートでスターフェスティバルゼリーこと、七夕ゼリーが登場する。わざわざテラスに用意してもらい、星空を眺めながら、ゼリーを食べるのだ。
制服に着替え、朝食の席に着くと、当然だが「スターフェスティバルの日」が家族の話題になる。だがアレクにとっては初耳なので、不思議そうな表情で話を聞いていた。そしてスターフェスティバルゼリーのことや、願いごとを書き、飾ることを知ると……。
アレクが甘えたい顔の子犬になっている!
つまり、そのイベントに興味があります! 参加したいです!――そんな顔になっていた。
そんな顔をされてしまうと……。
誘ってあげたくなる。
でも……。
アレク=断頭台。
私から誘うなんて。
「クリスティ。せっかくですから今年は、殿下もスターフェスティバルのディナーにご招待しては? いかがですか、殿下?」
母親に問われたアレクの顔は、ぱあああああっと輝く。
「ぜひ参加させてください!」
大変前のめりだ。
仕方ない。
避けるべき断頭台ではあるが、母親が声をかけてしまったのだから……。
◇
「これを短冊と私は呼んでいます。これに願いごとを書くんです。7月7日は語呂合わせもよく、特別。ここに書いた願いごとは、夜空の星が叶えてくれるかもしれません」
根拠などない理由だが、当時七歳の私がこう言ったところで、両親が「信憑性が全くないよ、クリスティ」と言うことはなかった。無条件で受け入れられた。
そして本日学校から戻り、制服からシアン色のセットアップに着替え、我が家にやってきたアレク。彼もまた、この何の根拠もない話に異論を挟むことなく、神妙な顔つきで聞いている。
「願いごとは一つだけです。恥ずかしい方は皆に分からない言葉で書いても大丈夫です。では始めましょう」
父親はいつもより早めに執務を切り上げ、リビングルームにわざわざ来てくれていた。そして若草色のドレスを着た母親と二人、ソファに座ると、流麗な文字で願いごとを書いている。ラズベリー色のドレスに着替えた私も、サラサラと願いごとを書く。しかも日本語で!
この国で日本語を読める人間なんていない。だから私は正々堂々、こう書いている。
『断罪回避が成功しますように。断頭台に送られず、三度目の人生、長生きできますように』
切なる願いだ。
一方の両親は、私のように理解不可能な言葉は使わない。
『親子三人、健康で平和に今年も一年、過ごせますように』
ふふ。お母様は毎年この願いよね。
『クリスティが一生、この領地で暮らしてくれますように』
! 父親の願いが変わっている!
なんだか「一生」と「この領地で」の筆圧が強く感じるわ……。
アレクはどうかしら……?
『私はただの音楽愛好家。かわいらしく、控えめな存在です』
?????
アレクにはこの短冊の意図が、伝わらなかったのかしら!?
願いごとというか……え、音楽がとても好きということを、控えめにアピールしているの……? しているのよね。え、なんで?
訳が分からないが、そのまま皆で庭園に出て、毎年この短冊を飾る低木のところへ向かう。針と糸を使い短冊を低木に飾った。
すると……。
「I’m a music lover, with a cute, humble entity.……アナグラムか」
「し、師匠! これは非常に個人的なものです。ですから解読は……しないでいただけませんか?」
王子様顔で顔を真っ赤にするアレクは……激レア過ぎます!
断頭台なのに、こんな愛らしいなんて!
ともかく短冊を飾り、夕食のためにダイニングルームに向かい歩き出す。
ここは父親が母親をエスコートするため、私はアレクにエスコートしてもらっている。
「クリスティのあの文字は何? 見たことがない」
アレクは興味津々という顔で私を見る。
「あれは架空の文字です。読めるのは私だけですから」
「なるほど。その手があったのか。アナグラムだと解読されてしまう心配がある。でも架空の文字なら……。来年は僕も架空の文字にするよ」
「そうですね。それがいいと思います……うんっ!?」
流れでつい、応じてしまった。
来年もアレクとスターフェスティバルを……そうよね。学院生活は三年間あるから。そうなるのよね……。
その件は一旦頭から追い払い、スターフェスティバルのディナーを楽しむ。
この日は料理人も遊び心を発揮してくれて、肉料理や魚料理のつけあわせで、星型にカットしたニンジンやズッキーニ、パプリカを添えてくれている。そして本日一番のお楽しみ。テラスに出て食べる七夕ゼリー!
「これは……なんて美しいゼリーなんだろう」
初めて我が家のパティシエが作る七夕ゼリー……スターフェスティバルゼリーを見たアレクが感動している。それは当然!
だって、本当に美しいのだ。
レモンゼリーとソーダ味のゼリーはクラッシュし、二層にして盛り付けてある。そこにパイナップルで作った星型が飾られ、さらにレモン風味のエスプーマとアラザンも散りばめている。
涼やかな見た目と上品な味わい。前世記憶の駄菓子味と違い、本格的。これぞ貴族のデザート!なのだ!
「……! 爽やかで一服の清涼感を与えてくれますね。パイナップルの甘みが、レモン風味のエスプーマで際立ちます。美味しいです」
「アレク王太子殿下。ゼリーもいいのですが、夜空を見てください!」
私の言葉にアレクが顔を上げる。
空にはちゃんとミルキーウェイ(天の川)があった。
キラキラと瞬き、時折、流れ星も見える。
前世よりうんと宇宙に近い星空が、そこに広がっていた。
「……スターフェスティバル。とても素敵なイベントだね。こんな風に星の川を眺め、絶品スイーツを楽しむなんて。七歳でクリスティはこれを思いついたのだろう? 感動したよ」
星を映したアレクの瞳もキラキラしている。
その瞳で見られると、なんだか妙にくすぐったい気持ちになってしまう。
じっとアレクと見つめ合うと、今、この瞬間。
世界はアレクと私だけのように思えてしまう。
胸が自然と高鳴っている。
ドキドキしてしまうのはなぜなの?
そして鼓動が早くなっているのは私だけ?
アレクはどうなの……?
「殿下! 食後のラベンダーティーが到着しました!」
父親の声に、我へ返る。
両親もいるのに、今、断頭台と見つめ合ってしまったわ!
しかも……少しドキドキしていた。
それにしてもラベンダーティー。
鎮静効果があると言われている。
まるでこの状況を見越したようだわ、お父様ったら!
初めて家族以外の、アレクも含め過ごしたスターフェスティバル……七夕の一日だった。
お読みいただき、ありがとうございます!
アナグラムの解読は本編の後書きでいつかするのでお楽しみに~!
そして今回、急遽小話を公開したのは、以下の理由からです。
活動報告で書いた通り、本日、7月6日に二度目の奇跡が起きました……!
目次のタイトル下の筆者名をクリックすると、活動報告が閲覧できます。
URLは長いのですが、記載しておきますね。
【感謝】読者様、ありがとうございます!(二度目の奇跡)
https://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/2371542/blogkey/3313987/






















































