11話:新しい日常!?
これが私の新しい日常なのだろうか?
早起きをして勉強をする。
時間が来たらダイニングルームへ向かい、そこで両親とアレクと朝食をとるのだ。その後はアレクと共に馬車へ乗り込み、学校へ向かう……。
もうそんな日々が何日も続いていた。
ただし。
学校へ向かう馬車の中。
そこはアレクと二人きり……というわけではない。
私が進言するまでもなく、父親はこうアレクに話した。
「殿下がクリスティと仲良くしてくださるのは光栄です。ですが、娘はまだ社交界デビュー前で、婚約者もいない身。世の貴族令嬢が、婚約者や家族以外の男性と、馬車で二人きりというのは、あまり好ましくないと考えられています。よって侍女を同乗させてもいいでしょうか?」
これに対してアレクは「そうですね。そうしましょう」と応じる。
おかげで馬車の中は、アレクとは二人きりではないのだが……。侍女は「私はここにいますが、いないものとして、殿下と会話をしてください」というのだ。ちなみにアレクの護衛の騎士は、馬車の左右に馬で並走している。だが侍女が乗り込むことに配慮してくれた。つまりアレクの護衛の騎士も一名、同乗するようになった。
だがこの護衛の騎士も侍女と同じ。基本的に気にしないでください――なのだ。よってやはり馬車の中で私は、アレクと話さなければならず……。
だが問題ない! 何せ父親からは領地に関するいろいろなことを幼い頃から聞いている。それは在学中の三年間、毎日話しても、話し終わらないだろう。
実際、毎日のように私は馬車の中で話し続けている。対面の席に座るアレクは、それをニコニコと嬉しそうに聞いていた。
今のところ、これで問題がない日々が続いている。
もしこの状態がキープできるなら、アレクとの間に婚約話なんて出ない気がした。父親は彼の剣術の師匠。私は彼にアイゼン辺境伯領についてレクチャーする教師。親子でアレクの成長をサポートしています!――ということ。そこに色恋沙汰はないのだから。
その一方で、何度かこんなことも考えたことがある。
この地にいるのは、アレクだけ。他の攻略対象もいなければ、ヒロインもいないのだ。もうこのまま卒業記念舞踏会での断罪劇もないのでは……?
ううん、そんなに甘くはないだろう。
乙女ゲームの世界、それすなわち、悪役令嬢の断罪を望んでいるのだから!
つまり断罪回避のためには、動き続ける必要があると思うのだ。
そこで私が始めたことは……。
お婿さん探し!
つまりは婚約者探しだ。
アレクの婚約者になる前に、別の相手と婚約してしまうという作戦だ。
この世界、離婚が認められていない上に、婚約破棄もタブーとされている。そもそも王侯貴族の婚約は、当事者の希望より、家同士の事情が優先されていた。つまり政略結婚。よって婚約契約書が交わされる。婚約破棄をしようものなら、違約金やら賠償金やらで、破産しかねない。
つまりアレク以外と婚約してしまえば、私の勝ち!になるはずだった。
そして間もなく私も社交界デビュー。
動かない手はない!
そもそも社交界デビューすることで、大人の一員として認められるようになる。ここを境に令息令嬢問わず、婚約者探しが本格的になる。さらに言えば、社交界デビューの場となる舞踏会。この舞踏会にエスコートしてくれた相手は、婚約者候補になりうる。
ということで。
社交界デビューとなる舞踏会に私をエスコートしてくれる相手。
ちゃんと目星をつけておいた。
それがこの三人。
父親の部下である副官の息子。
辺境伯領にあるアカデミーの教授の息子。
隣の領地から学院に通う侯爵家の令息。
学校から戻り、少し遅めティータイムを過ごしながら、誰にしようか迷っていると、父親がやってきた。
「お父様、休憩ですか?」
「ああ。クリスティが一人でお茶を飲んでいると補佐官が教えてくれた。クリスティを一人にするわけにはいかないからね」
今日、母親はお茶会仲間のマダムとオペラ鑑賞をしており、帰宅は夕食後の時間になる。普段ならティータイムは母親と一緒だったので、父親は気を遣ってくれたようだ。
すぐにメイドに父親の紅茶を用意してもらう。
「そういえばクリスティ。間もなく社交界デビューとなる舞踏会だね。……エスコートはどうするんだい?」
そこで母親の言葉を思い出す。
両親は私が婚約者探しをしていることを知らない。社交界デビューを控えているのに、まだまだ私を子供だと思っていた。だから今回のエスコートについて「もしもの時は、わたしの出番かな」と父親は言っていたというのだ。
つまりエスコートを頼まれるかもしれないと、父親は期待している……。
お父様、ごめんなさい。
できればそうしたいのですが、私はアレク以外の令息と婚約しないと、断頭台の露となり、消えてしまうのです……。過去二回、本当にそうなっているので、ごめんなさい!
ということで心を鬼にして口を開く。
「侯爵家の令息に打診しようと思います!」「なんだって!」
この時の私は……侯爵家の令息の名をうっかり出してしまったが、それが大変な事態をもたらすなんて、想像だにしていない。そしてこの時の父親は、明日地球は滅亡すると知らされたような顔をし、席を立った。
大丈夫かと思ったが、夕食の席ではいつもの父親。
よって安堵していたら……。






















































