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なろうラジオ大賞4の投稿シリーズ

その屋根裏には付喪神がいる

 ()の首輪に括り付く狸の根付。

 それが儂だ。

 神社で100年程売れ残っただけだがいつの間にか付喪神(つくもがみ)になっていたのだ。

 狐ならともかく狸なぞ。

 売れる訳がなかろうが、ここの神主は昔から少し変わり者が揃うのだ。

 昴は何が気に入ったんだか、この神社から儂を連れ出した。驚いたが高揚感もむべなるかな。新しい世界というのは楽しいものだ。その日から儂の住処は魔女の家の屋根裏になった。あぁ、「魔女」とは昴の飼い主だ。本当の魔女ではない。儂と昴だけの渾名みたいなもんだな。


 喫茶店を営む魔女の処に、時折じいさんが来る。

 ぽつぽつと二人で喋る昔話は、屋根裏で聞き耳を立てる儂も楽しい。

 昨日の晩はこうだった。


昴子(こうこ)の葬式の晩、皆オイオイ泣いてるのにママだけは全く泣かなかったな。」

「私の泣き顔なんて人様に見せられないもの。」

「…皆が帰って俺と二人になっても泣かなかった。」

「そうだった?私も冷たい女ねぇ。」

「逆だろ。俺が泣けるように我慢してくれたんだろ。自分は慰め役に廻ってさ。あの時は気付かなかったけど、今頃になって見える事ってあるな。…あの後ちゃんと泣けたか?」



 魔女はいい女だ。

 さて、今日は秋らしい良い天気だ。


「おい、昴、神社へ行くぞ。」

「にゃー?」

「面倒臭がるな。」


 楠を左に、楓と梅の間を通って境内をぐるりと回り柵沿いに歩く。

 線路が神社の台地にぴたりとへばり付くように配置され、上から眺める青い電車はコトンコトンとのんびり走る。斜面はピンクの夕化粧(ユウゲショウ)が我が物顔で葉を繁らすが、そのわりに電車にはぶつからぬ様伸び方をわきまえており、自由奔放と見せて賢さも持ち合わせているのはじつに見事だ。


 そこへ若い男女が二人、きちんと一礼して鳥居をくぐる。


 ほぅ、儂が鯖味噌を振る舞ったあの二人か。やはり交際を始めたな。あの二人には災難を踏んで立つ力があると儂は見る。きっと支え合うはずだ。


「にゃー。」

「魔女とあのじいさんの進展も?いや年寄りはほっとけ。昴が居るから充分だろ。」




 _____あの日、僕はいつも通りの巡回をしていたんだ。風が軽くなったなぁ、なんて思ったら梅の香りが届いて、あ、春だ。って気付いて。そしたら寂しさの匂いも混ざっててさ。匂いの元を辿ったら狸の根付だった。狛犬に聞いたら連れて行け、って言うから僕の秘密の部屋に連れてったんだ。

 そうだよ。喋るし夜なら自在に動くけどそれがどうかした?


 あ…ふ。

 そんな事より僕、眠いからさ。

 じゃまたね。



良ければ他のなろラジ大賞4への応募作品にもお立ち寄り下さい。本文のタイトル上部『なろうラジオ大賞4の投稿シリーズ』をタップして頂けるとリンクがあり、それぞれ短編ですがどこかに繋がりがあります。

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― 新着の感想 ―
[良い点] シリーズの表示された上から順番に読み進め、最後にこの作品となりました。 昴の「じゃまたね」の言葉に、物語と終わりを感じるとともに新たなシリーズがあるのではないかという予感がしました。 もし…
[一言] 一気に4作品も出ていて驚き、こちらに感想を纏めることをお許しください。 どの作品も繋がりを感じさせつつ、テイストが違い どれも背景が分かりやすくて、楽しく読ませて頂きました。私も頑張りますね…
[一言] 新作、お待ちしてました。 動物?目線で見る人間の日常。 ほのぼの感もあり、ママとじいさんの微妙な関係もありと面白かったです。
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