その屋根裏には付喪神がいる
猫の首輪に括り付く狸の根付。
それが儂だ。
神社で100年程売れ残っただけだがいつの間にか付喪神になっていたのだ。
狐ならともかく狸なぞ。
売れる訳がなかろうが、ここの神主は昔から少し変わり者が揃うのだ。
昴は何が気に入ったんだか、この神社から儂を連れ出した。驚いたが高揚感もむべなるかな。新しい世界というのは楽しいものだ。その日から儂の住処は魔女の家の屋根裏になった。あぁ、「魔女」とは昴の飼い主だ。本当の魔女ではない。儂と昴だけの渾名みたいなもんだな。
喫茶店を営む魔女の処に、時折じいさんが来る。
ぽつぽつと二人で喋る昔話は、屋根裏で聞き耳を立てる儂も楽しい。
昨日の晩はこうだった。
「昴子の葬式の晩、皆オイオイ泣いてるのにママだけは全く泣かなかったな。」
「私の泣き顔なんて人様に見せられないもの。」
「…皆が帰って俺と二人になっても泣かなかった。」
「そうだった?私も冷たい女ねぇ。」
「逆だろ。俺が泣けるように我慢してくれたんだろ。自分は慰め役に廻ってさ。あの時は気付かなかったけど、今頃になって見える事ってあるな。…あの後ちゃんと泣けたか?」
魔女はいい女だ。
さて、今日は秋らしい良い天気だ。
「おい、昴、神社へ行くぞ。」
「にゃー?」
「面倒臭がるな。」
楠を左に、楓と梅の間を通って境内をぐるりと回り柵沿いに歩く。
線路が神社の台地にぴたりとへばり付くように配置され、上から眺める青い電車はコトンコトンとのんびり走る。斜面はピンクの夕化粧が我が物顔で葉を繁らすが、そのわりに電車にはぶつからぬ様伸び方をわきまえており、自由奔放と見せて賢さも持ち合わせているのはじつに見事だ。
そこへ若い男女が二人、きちんと一礼して鳥居をくぐる。
ほぅ、儂が鯖味噌を振る舞ったあの二人か。やはり交際を始めたな。あの二人には災難を踏んで立つ力があると儂は見る。きっと支え合うはずだ。
「にゃー。」
「魔女とあのじいさんの進展も?いや年寄りはほっとけ。昴が居るから充分だろ。」
_____あの日、僕はいつも通りの巡回をしていたんだ。風が軽くなったなぁ、なんて思ったら梅の香りが届いて、あ、春だ。って気付いて。そしたら寂しさの匂いも混ざっててさ。匂いの元を辿ったら狸の根付だった。狛犬に聞いたら連れて行け、って言うから僕の秘密の部屋に連れてったんだ。
そうだよ。喋るし夜なら自在に動くけどそれがどうかした?
あ…ふ。
そんな事より僕、眠いからさ。
じゃまたね。
良ければ他のなろラジ大賞4への応募作品にもお立ち寄り下さい。本文のタイトル上部『なろうラジオ大賞4の投稿シリーズ』をタップして頂けるとリンクがあり、それぞれ短編ですがどこかに繋がりがあります。