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4.晴天の霹靂
「行く所が無いなら、結婚しないか」
フィリップが伝達事項の様に告げる。
何を言ってるんだと言う目を向ける。
ウィルの婚約でただでさえ凹んでいるのに、悪質な冗談に付き合う余裕はない。
「……冗談にしても最低です」
彼は驚いたように顔を上げる。
ーー久しぶりに目が合ったな。
呑気にそんな事を思う。
「…冗談でこんな事言うわけないだろ」
頭の中で疑問符が渦巻く。フィリップだって辞めた後私が留学することを知ってるはずだ。
「結婚すればいいじゃないか」
黙っていると彼は続けて言う。
「どうせ行く宛もないだろ」
冗談じゃないとしたって最悪なプロポーズだと思う。
だんだん腹が立ってきて執務机に向かってツカツカと近づく。
「誰でも良い訳じゃないです」
こちらの勢いに唖然として仰け反っている彼に向かって言い放つ。
「メガネもロン毛もタイプじゃないです」