2.初恋とはじまり
初めてウィリアムに会ったのは五歳の頃だった。
絵本の中の王子様みたいだと思った。
その頃は隣国ベルポホンの辺境カヤに住んでいてお父様も存命だった。
ラウト王国第一王子だったお父様はベルポホンから留学していた侯爵令嬢の侍女と劇的な恋に落ち、平民となった。
「バカ王子」なんて揶揄されていたけれど、朗らかで優しい父だった。
王族では無くなったけれど、年に数回王城を訪ねていた。
初めて入れ替わったのは七歳の時、
『貴方達本当に良く似てるわね』
二人でいるとあまりにもいろんな人に言われるから
「ちょっと試してみようよ」
とウィルが言い出した。
「僕が隠れてるから」
ウィリアム付きの侍女アンナに
ウィルの声色を真似て話しかける。
「アニーお茶をお願い」
「かしこまりました」
アンナはすんなりと受け入れる。
物陰に隠れたウィリアムと目が合う。
少しの罪悪感と好きな人に似ている嬉しさだった。
八歳の時お父様が事故で亡くなり、カヤの不況で学校にも通えなくなった。
正式に影武者になったのは十歳の時、
女王陛下は何度も本当に良いのか尋ねられたけれど、生活を安定させるには一番良いような気がしたし、何より勉強がしたかった。
あいにく運動神経は良かった為、ウィリアムの代わりに剣技や演舞、軍の式典等に出席した。
ーーそれももう終わりだけど。
ウィルの身長に合わせて底上げしたブーツに足を通す。さよならの準備なら初めて恋に落ちたあの日からずっとしていた。




