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10.高鳴りとざわめき
あれからウィリアムはなんとか婚約破棄は免れたものの、必死で振り向いて貰おうとしているようだった。
ソフィア嬢ともリリアナの姿で二度ほどお茶をした。
二人でいる姿を見て胸が痛まなくなった訳じゃないけれど、前より穏やかな気持ちで見れるようになったと思う。
「求婚している方です、は言わなくても良かったんじゃないかな」
フィリップと二人きりになった執務室、照れてるのを誤魔化すように口にした。
「だってまだ婚約者じゃないだろ」
フィリップは平然と言ってのける。
あまりに堂々しているものだから、言葉に詰まっていると身を乗り出してきて左手を掴まれる。
「……ウィリアムの事が好きなままでいいから」
じっと見つめられる。
「…側に居てくれないか」
だんだん小さくなっていく声に比例して握る力が強くなる。
「…私は、」
「おーい」
いきなり入って来たベンに遮られて、その先は続けられなかった。
ーー一緒にいるのが嫌なわけじゃない、だけど今から留学するのに
リリアナの姿で出掛けたベンのお使いの帰り道。ぼんやりと考えていると
「見つけたぞ!」
急に後ろから羽交締めにされる。反抗する間も無く目の前が真っ暗になった。




