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冬の戦士、雪だるま

作者: ふみ

「おっ、強そうな雪だるまだな」


 子供の頃、雪だるまを作っていると近所のお爺さんが言った。

 雪だるまが強そうと思ったことはなかったので不思議な感じがしたが、単純に褒められていると思って嬉しかった。


「でも、雪だるまって、すぐにボロボロになっちゃうよね?」


 一緒に作っていた兄が言うと、


「どうしてだか知ってるか?」


 逆にお爺さんが質問を返してくる。


「そりゃぁ、雪だから溶けちゃうからだよ」


 兄は得意気に答えたが、お爺さんは笑顔で首を横に振っていた。


「それは違うな。雪だるまは戦ってくれているんだ」


「戦ってる?……何と?」


「雪男だよ」


 子供だった俺と兄は少し怖くなっていた。雪男なんて山奥に出現するものだと思い込んでいたから、こんな身近にいるわけがない。


「ゆ、雪男なんて、いるわけないよ!」


 兄が不安を打消すように、お爺さんに言い返した。


「いや、雪の降る夜に人知れず山から下りてくるんだ。そして、人間に悪さをしようとするんだ」


 俺はドキドキしながら聞いていた。たぶん兄も。


「そんな雪男から守ってくれているのが雪だるまなんだ。雪だるまは、自分を作ってくれた人たちを守ってくれる戦士なんだよ」


 今、俺と兄は自分たちが作っている雪だるまをジッと見ていた。


「だから、夜は家の中で大人しくしていないと雪だるまの戦いの邪魔になってしまう。雪だるまは戦っている姿を子供たちに見られたくないんだ」


「……うん。……そうだね」


 俺たちはスッカリ騙されてしまっていた。


「明るい昼間のうちに、雪だるまを沢山作ってくれよ。雪男を山に追い返さないといけないからな」


 そう言って、お爺さんは立ち去ってしまった。

 そして俺たち兄弟は冬の間、一生懸命雪だるまを作り続けて、夜は家の中で雪だるまを応援することになった。



 大人になって思い出すと、冬でも昼間は外で元気に遊ばせて、危険な夜に外出させないために、お爺さんが嘘をついたことは分かっている。


 それでも、冬の日に崩れかけた雪だるまを見つけると話しかけてしまう。


「頑張ってくれて、ありがとうな」


 すると、雪だるまが誇らし気な顔を見せてくれているような気がして、昔を思い出すのだ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 可愛らしいお話に、どこか懐かしい気持ちにもなりました。 心が温かくなる物語ですね^^
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