プロヴァンスであなたを想えば
※ 本作品は、天界音楽様御主催の「今からファンアート2021」企画参加作品です。
加純様のイラスト「思い出の本とラベンダーの香り」(https://21092.mitemin.net/i584508/)を、イメージイラストとして使用させて頂きました。
加純様、イラスト「思い出の本とラベンダーの香り」の使用を御快諾頂き、ありがとうございます。
風が吹き抜ける
さらされた骨のような小石が斜面を転がる
土というものは存在しない
砂であっても飛ばされていくのだから
むき出しの心をなぶる
この風の名はミストラル、浴びに来たというのに
足元から揺さぶられる
膝をついても自分を留められない
離れて見れば灰色の
四角を重ねたサント・ヴィクトワール山
カンヴァスを飛ばされた画家
描き連ねた画家、いずれも共に哀しい
存在を押し流す風と
壁土を粉にする時代遅れの風車
滑稽さか逞しさか
人は何かに自分を委ねて縛る
縛り損ねた私は
痩せた土地にしがみつくラベンダーのように
花を終え冬を迎える
ゆるまない圧倒的な風に屈するだけ
昔寡黙な男がいた
妻子を亡くしどんぐりを集めた
選り分けて植える
植え続けて森を作ったという
男の森の周囲には
水が戻り土が宿り、とりどりの花が咲く
それが私の天命だろうに
ラベンダーの眠りに停滞する
風は吹き抜ける
内陸の羊たちからカマルグの白馬に向けて
偉大な六角形の片隅を
人々の意識を剥き出しにしながら
風土、景観、寂寥、孤独
せめてこちらの芝生は青いと
歌いかけたいあなたがいたら
せせらぎ越えて飛んで来いと
挑むあなたが戻ってくれたら
六角形 レグザゴーヌ l'Hexagone フランス国土の愛称です。
プロヴァンス関連の「思い出の本」リスト
作中に内容が出てくるもの
フレデリック・ミストラル「プロヴァンスの少女:ミレイユ」
アルフォンス・ドーデ「風車小屋だより」
ジャン・ジオノ「木を植えた男」絵本
ジョゼフ・カントルーブ「オーヴェルニュの歌」第1集:バイレロ(高地オーヴェルニュの羊飼の歌) 民謡集
オーヴェルニュ地方はプロヴァンスより北西の緑豊かな土地。同じ強風ミストラルが吹きます。
根底に影響を受けてる本
和辻哲郎「風土」
三島由紀夫「潮騒」
画家はゴッホとセザンヌ。
こんなものでできあがっております。
夫はなぜかフランスが好きでした。一緒にプロヴァンスへは行けませんでしたが。
そういえば新婚旅行、フランスの田舎町を巡ったんでした。