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「それにしても同級生であるはずなのに、2人は私よりもよくわかっているのだな。本当に優秀なのだな」
感心したように言うヴェルムにユーゴは
「我々とヴェルム様ではやはり立場が違いますからね。ヴェルム様は公爵家を興すか、ご実家が婿入り先を探すかして当主となることが決まっていますが、我々は将来の保証がありませんからね。のんきに構えているわけにはいかないのですよ」
と、笑っていない笑顔で答えた。思いがけない冷たさに、ヴェルムは
「確かに私の将来は保証されているかもしれないが、だからこそ兄上の役に立てるようにならなければならない。兄上には、内政も外交も軍事もその分野で極めて優秀と言われる側近がいるのだから、私はそれ以外の分野でできることを探そうと思っていたのだ。それで平民の生活などに詳しくなれれば、とこれでも考えてはいたのだ」
と自分なりの主張をした。だがユーゴは
「優秀な人がいるからその分野は選ばないなんて、初めからあきらめているんですか?やはり余裕があるんですね。私などは成果が出せるのであればどの分野でも構わないと思い、あらゆる分野で努力してきました。そもそも優秀な側近がいたからと言って、彼らと協力できない訳ではないでしょう。それとも彼らの上に行こうという気概も、彼らの下で協力しようという覚悟もありませんでしたか」
と、口調だけは丁寧に話すのがまた、怖く感じられるのだった。ヴェルムが何も言えなくなってしまうと、サイモンが助け舟を出してきた。
「ユーゴ様、貴方が常々甘えた考え方をする方々に不満をお持ちなのは存じていますが、今はそれを表す場でもないでしょう。紹介してくださったフィリップ様にも失礼ですよ」
読んでくださってありがとうございます。
短くてすみません。




