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ヴェルムが先生にさん付けで呼んでもらうようになったことはすぐに生徒の間でも知れ渡り、全体的にほっとしたような雰囲気に変化した。ヴェルムは身分の高さもあり、周囲から話しかけられることはそれまでほとんどなかった。また、話せば相手を様付けで呼ばねばならないということもあり、ヴェルムから話しかけることもほとんどなかった。だからこそ余計にミリアとの在り方が注目されていたのだ。
ヴェルムは今の自分の在り方を拙いと感じ、もっと人と交流を持たなければいけないと思った。そして誰かに話しかけようと思った。が、いざそうなると、事前の情報収集の甘さから誰に話しかければいいのかわからない。リアムに紹介してもらい、そこから知り合いを作っていくというのが、入学前に考えられていたやり方だった。しかしヴェルムはリアムにはわだかまりを持ってしまい、今は紹介を頼むこともできなかった。仕方なくその日は孤高を貫き、放課後にフィリップに相談することにした。
フィリップは室長を務めるだけのことはあり、顔も広かった。それならばと寮のサロンにヴェルムと同学年で評価の高い令息を集め、紹介した。本来はもっと早く顔合わせをするはずだったのだが、仲介するはずのリアムは彼らから紹介してくれと言われるのを待っており、彼らもリアムから紹介すると言われるのを待っていた。そのうちミリアとのことがあり、新たに交流を広げるような状況ではなくなり、彼らとしてもヴェルムと縁を持つことに躊躇いを感じるようになっていたのだ。
この場に集まった中では当然ヴェルムが1番身分が高い。ヴェルムが始めに集まってくれたことに礼を述べ、フィリップには仲介してくれたことについて礼を述べた。そこに礼儀知らずな女生徒との交際を噂されるような情けない姿は見えなかった。
「ヴェルム様、紹介しますね。文官科に所属しているユーゴ様とサイモン様です。ヴェルム様は文官科の中で知り合いが少ないと聞きましたので、彼らを紹介させて頂こうと思いました。」
そう、ヴェルムは文官科に所属しながら、騎士科のリアム以外に知り合いがいなかったのだ。講義が確定してくるこの時期にリアムが離れていったのは、取る講義があまり重ならないから、という側面もあったのだ。
誤字報告ありがとうございました。
感想もありがとうございます。とてもうれしいです。どう書いていいかわからないため、返信できないのですが、小躍りして喜んでます。




