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ベッカー先生に尋ねられヴェルムは戸惑った。


「ベッカー先生、いきなりそのような質問をされてるのはどういう訳ですか?私は王族として、当然信じている、と答えるべきなのでしょうが…」


フェンベルグ王国では、王族は精霊を信仰しており、王族には精霊の加護を持つ者が出やすい、というのが王族の主張である。ベッカー先生もそれは承知している。


「ヴェルム様がそのように答えねばならないことは存じております。しかし、実際にはどうなのでしょうか。実は先日、精霊石を光らせた生徒が精霊を信じているとのことだったのです。精霊を信じていれば精霊石を光らせたり、精霊の加護を受けられたりするのではないかと考えたのです。王族の方々が精霊の加護を受けやすいというのであれば、王族は誠に精霊を信仰していらっしゃるのではないかと愚考するのです」


ヴェルムは答えに困ってしまった。実際には王族でも数世代にわたって加護持ちは出ていない。ヴェルム自身も精霊などは迷信だろうと思っている。だが、わざわざベッカー先生が尋ねてくるということは何かあるのかもしれない。


「…私は他の者と同様のことしか知りません。ですが、私は臣籍降下する身です。知らされていないことも多くあるかもしれません。ベッカー先生が本当に知りたいのであれば、陛下か王太子殿下にお尋ね頂く方がいいのではないでしょうか」


ベッカー先生はヴェルムの消極的な態度を残念に思った。


「ヴェルム様はご自身で知りたいとは思われないのですか?確かに知らされていないこともあるでしょうが、知らされていないことと知るべきではないことは同じではありません。王家にとって精霊とはどのようなものか、表向きのことだけでも調べてみませんか。実はターニャ嬢に我々が精霊に対する信仰を失ったから加護が失われたのだと言われたのです。精霊を信じていたかどうかと加護持ちのいる割合を比べてみたらおもしろいと思ったのです。王族の一員として精霊信仰に関する研究に携わるのは大切なことではありませんか?」


ヴェルムはターニャ嬢に言われた、という点に興味をひかれた。自分にあのように諫言してくれたターニャには感謝もしていたし、改めて話をしてみたいと思ってもいた。ターニャ嬢がこのことに関わっているのならば自分も関わってみてもいいかもしれない、と思えた。更に王族の一員として大切だ、と言われたことはヴェルムの自尊心をくすぐった。


「そこまでおっしゃるならば、その研究をお手伝いさせてください」

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