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フィリップは頭を抱えてしまった。ヴェルムは側近候補であるリアムにも見限られる寸前ではないか。本来リアムは、学園ではできるだけヴェルムのそばにいるべきなのだが、最近は教室でも少し距離を開けているらしい。


「そういえば、リアム様は側近候補でありながら、最近はヴェルム様とは距離を置かれているとか」


「ええ。あのように女性と浮名を流すような方の巻き添えになるのはまっぴらです」


この言い方にはフィリップは眉をひそめた。


「本来はあなたがいさめるべきでしょう」


この言葉にリアムは我慢がならなかったようだった。


「随分私はお諫めしました。それなのに私の言葉を何も聞き入れなかったのは殿下です!」


「リアム様の言いたいこともわかりますよ。しかし、その言い方は駄目です。殿下ではなくヴェルム様。それにヴェルム様に合わせた言葉遣いをしなくては。誰からもそうした注意を受けていないのですか?今のままではヴェルム様だけでなく、リアム様も規則違反の対象ですよ」


リアムもそのことは理解してはいたのだろう。だが、リアムにも事情があったのだ。


「わかってます。でも殿下から入学前に言われたんです。私に様付で呼ばれるのは侮られているようで嫌だと」


フィリップは顔色を変えた。規則を破るように命令したとなるとヴェルムの立場はかなりまずいものになる。


「それは、様づけで呼んではいけないと命令されたのですか?」


「…はっきりと言われたわけではありません。しかし側近候補なら主となる方の意思を尊重すべきだと言われました」


フィリップはとりあえず安心した。


「命令されたわけではないのなら、貴方は規則を優先すべきです。それに主の意思だからと言って、主が規則を破ろうとするのを助けてどうするのですか。あなたが力を尽くしてもどうにもならなかったのならば、周囲に手助けを求めるべきでした。すべてを一人で解決する必要はないのですよ」

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