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フィリップはこの1か月、とにかく困っていた。新入生のヴェルムが規則を守らないのだ。それだけでなく、マナーの悪い平民育ちの女生徒との付き合い方に問題があるのではないかと噂になりつつある。もともと第二王子であるヴェルムは決して前評判の悪い人物ではなかった。確かに王太子である第一王子に比べると、凡庸で優柔不断の気があるとは言われていたが、決して傲慢な人物とは言われていなかった。それが入寮の時から規則を守ろうとせず、注意すれば無視をする。いい関係を築こうにも会話をしようともしないのだ。フィリップは思いあぐねてヴェルムの側近候補であるリアムに相談することにした。


リアムはフィリップの友人が室長をしている部屋に所属している。リアムがヴェルムの側近であれば同室になったかもしれないが、リアムはあくまでも側近候補であった。ヴェルムが王族に残るのであれば側近も必要だが、いずれ王太子に後継ぎができれば臣籍降下する。そうなれば側近を持つことはない。もちろんそれ以前に王太子に何かあればヴェルムが王太子に繰り上がり、自分の側近も必要にはなる。だが、それを望むのは凡庸なヴェルムを傀儡にしたいと思うような者くらいでしかない。多くの者がヴェルムはいずれ臣籍降下し、リアムも側近になることはないと考えていた。だからこそ、寮でまで同室になる必要はないだろうと思われていたのだ。


そんなわけで、フィリップは友人の部屋を訪ねる体でリアムに会いに行った。ヴェルムがどういうつもりで学園の規則を守らないのかリアムから聞き出し、できればリアムからヴェルムに注意してほしいというつもりだった。だがリアムは


「殿下は私の言うことなんか聞きませんよ」


と半ば投げやりのような調子で言うのだった。


「ヴェルム様はそんなに狭量な方なのか?」


フィリップは聞き返してしまった。室長としてヴェルムを引き受けるにあたり与えられた情報では、ヴェルムとリアムは悪い関係ではないはずだった。


「殿下は殿下として扱われないのがお嫌のようでしたよ。入学前に規則のことを話したら、王族の権威がどうのとかおっしゃって、自分より下の身分の人間に様づけなんてできないとのことでしたから。私も『殿下をどうにかしてくれ』と言われることが多くて閉口しているんです」


リアムも誰にも愚痴をこぼせずにいたのだろう。ここぞとばかりに言い募るのだった。

予約がうまくできていなかったみたいで、遅れてしまいました。楽しみにしていて下さった方がいたら、すみませんでした。

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