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まずリアムがヴェルムに忠告をした。
「ヴェルム様、ミリア様とのこれ以上の交流は控えるべきです」
「いきなり何を言うんだ。交流と言っても私はマナーを注意したり、簡単なことを教えているだけだ。他にミリアに教える者がいるならば構わないが、いないのだから仕方がないだろう」
「いない訳がないでしょう。ミリア様は女生徒には教えを請わないし、女生徒が注意しても聞く耳を持たないと有名です。そもそも本気でマナーを学びたいのであれば、教師に頼めばいいのです」
「…そうか。確かに教師に頼むのが一番確実だな。うん。次に会ったときに教師に頼むよう伝えよう」
リアムはこの返事に対して頭を抱えてしまった。
(伝えても無駄でしょうに。なぜわからないのですかね。まったく、素直なところがこの方のいいところだ。いいところではあるのだが…。ここまでくると素直を通り越してるぞ。あんな見え見えの手管に引っかかるなんて…。いや、男女の好意までは発展してないみたいだから引っかかってはいないのか?とにかく単純すぎる。王族としてこれでやっていけるのか?とりあえず罠に引っかかってはいないが、罠の存在に気づいてもいないと報告しておかないと)
この報告に対し上からは、決定的な失敗をしそうになるまでは様子見をするようにとの指示が来た。リアムはハラハラしながら、ヴェルムとミリアの関係を見守ることにしたのだった。また、ヴェルムがミリアに対し、教師に教えてもらうよう頼んではどうかとアドバイスをしたのだが、
「でもぅ、お忙しい先生方の手を煩わせるのは申し訳なくて…」
と言われて、周囲が
(先生方は仕事だからいいんだよ。王子殿下の手を煩わせる方が問題だろう)
と苦々しく思っているのに、
「そうか。ミリア嬢は謙虚なのだな。ならば、私にできることがあったら手伝おう」
と頓珍漢な感想を抱くをいうヴェルムであった。
またファビエンヌはファビエンヌでミリアに注意をしようとしていた。ターニャが最上位ではあったが、身分的に平民のターニャは誰かの紹介が無くてはミリアに話しかけることができず、注意もできない。そのため、注意するのはファビエンヌの役目ということになる。だが、入学式初日の様子では普通に注意をしても聞き入れられないだろう。ファビエンヌはとりあえず、ミリアの行動を理解できるのではないかと思われる平民のクラスメイトに相談することにした。
10月1日に初投稿から1年を迎えました。
この間一度も休まずに毎週金曜日にアップすることができました。
1年たったのにまだ話がここまでしか進んでいないのは予想外でしたが…
亀の歩みではありますが、最後まで頑張りたいと思います。
今後ともよろしくお願いいたします。




