表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/169

36

ターニャは思いがけず、刺繍の試験を共に受けた人物と共に学生課へ行くこととなった。


「ターニャと申します。学生課までご一緒してもよろしいでしょうか」

「クロエと申します。ご一緒できればうれしいです」


互いに相手の身分がわからないため、探りながらの会話となった。とはいうものの、ターニャは平民であるから誰に対しても目下の振る舞いをすれば間違いはない。そういう点では気楽であった。教えられることのない身分を推し量って、相手に応じた振る舞いをすることが求められるこの学園は、実はとても厳しい場所であった。

ターニャが、自分は下の身分であると示す振る舞いをしていることから、クロエは上の立場として振る舞うことができた。


「ターニャのストールはすてきでしたね。基本のステッチでも素晴らしい作品ができるのだと、目の覚める想いでした」

「ありがとうございます。クロエ様が刺繍なさったのは王家の家紋でしたでしょうか?とても緻密に縫い取られていらっしゃいましたね」


フェンベルグでは刺繍というと花や鳥のように写実的な物が主流である。ターニャのしたような幾何学模様を配した作品は目新しい物であった。


学生課まではさほど距離はなく、すぐに着いた。言われていた通り、ターニャ達以外の受験生はおらず、すぐに受け付けてもらえた。


「淑女科で学生課から結果を聞くように言われて参りました。ターニャと申します」

「ターニャさんですね。では結果をお知らせしますので、こちらへどうぞ」


そう言うと職員は受付の横に並んでいる個室にターニャを案内した。クロエも一つおいて隣の部屋に案内されるようだった。


「間の部屋は使って…?」

「いえ、余裕があるならば一つおきに使うのですよ。隣の部屋に人が入ることを嫌がる方もいらっしゃいますからね」

「そうなのですか?」

「情報というものの大切さはご存じなのでは?」

「…ああ、そういうことですか」


学生課で個別に対応するのは大切な内容のことだろう。そんな情報を何としても手に入れようとする者もいるのだ。この後も入学の手続きがある。その時にはその人物の身分を明らかにしなければならない。話が聞こえる距離にほかの人間を置かないようにするのは必要なことなのだ。


シンプルだが質のいい応接セットに職員とターニャは向かい合って腰を下ろした。


「では、改めましてターニャさん。合格おめでとうございます」


評価・ブクマ・いいね、ありがとうございます。励みになります!

やっと合格までたどりついた…。

亀の歩みで本当にすみません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ