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フェンベルグ王立学園の入学試験は数日間に渡って行われる。

初日に全科共通の、知識を問う一問一答式の試験が行われる。

2日目には各科によって異なる論文式の試験が行われる。

3日目以降は2日目に書いた論文を踏まえて面接式の試験がある。知識を丸暗記するのではなく、自分で考える力を持っているか、学園で学ぶ熱意があるか、といったことが測られるのだ。

そして面接の試験と並行して実技試験が行われる。音楽・絵画・刺繍・詩作から一つ以上を選んで行われる。音楽の演奏に関してはすぐにできるものだが、それ以外は試験監督者の前で実際に作成する。詩作もその場でテーマが与えられて創作する。絵画や刺繍は用意された材料を使ってその場で製作する。絵画や刺繍は時間もかかるので、そのための部屋に通うことになる。試験の基準に達していることがわかれば合格となるため、合格者には随時合格したことが知らされる。


ターニャは試験までの日々が楽しくて仕方がなかった。実はターニャにとって同年代の女子と交流するのは初めてだった。村には子供が少なく、砦には同年代は男子しかいなかった。実は寮でアネットと出会ったときはとても緊張していたのだが、ミレーネから、

『誰に会っても堂々としていなさい。あなたの価値を決めるのはあなたの出身ではありません。あなたがどう振舞い、何を為すかがあなたの価値となるのです』

と言われた。その言葉を心に刻み、平民出身とわかるような振る舞いはしないようにしようと決めてきた。平民出身だからといって基準が甘くなることは無いのだ。かといって厳しくなるわけでもない。ただ生活面での援助を受けられるというだけだ。

だからアネットと出会った時も堂々と、己を卑下することなく応対した。心のどこかに

(相手はお貴族様なのに…)

という想いもなかったわけではない。しかし、学園内では対等の態度が許されると聞き、卑下する態度はよくないと直感的に思った。対等に振舞うことが許されるということは、対等に振舞えるだけの実力を身につけろということなのだろう。わざわざ貴族が多い学園に来るのだ。卑下し、目こぼしを願うくらいなら、最初から来なければいいのだ。この学園の規則はターニャにとって実に興味深く、おもしろく感じられるものだった。

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