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いよいよターニャの旅立ちの日が来た。試験に受かろうが落ちようが、もう砦には戻らない。万が一落ちた場合には学園の下働きとして働きながら翌年受験する予定である。実際、学園の寮で働く者はそうした者が多い。試験の結果発表と同時に受かって辞める者や、落ちて雇い入れられる者が多く出る。


ターニャと砦の女性たちとの別れは一見あっさりとしたものだった。始めからターニャは数年で砦を去ることがわかっていた。更に砦の人間は皆、見習いの少なくない人数が途中で砦を去ることを知っていた。このような別れは、いわば砦の風物詩である。とは言え、いずれは騎士になるであろう者たちと違い、ターニャの将来がどうなるかは全くわからない。学園の淑女科から女官として就職するかもしれないし、本人の希望する通り刺繍の腕を磨いて刺繍職人として就職するかもしれない。場合によっては在学中にいい縁を見つけ、嫁ぐかもしれない。メラニーは女性陣を代表してターニャに声をかけた。


「あなたがどんな道に進むとしても、私たちは応援していますよ」

「ありがとうございます。私がここまで来られたのは、メラニー様やミレーネさんを始めとする皆様のおかげです。皆様の教えに恥じぬよう頑張って参ります」


ターニャはあらかじめ考えていた別れの言葉をしっかりと言えたものの、声は震え、目は潤んでいた。村を出たときは両親との別れの実感もなく、将来への期待に胸膨らませるばかりであったが、今回は将来への不安や別れの淋しさをひしひしと感じていた。


「ターニャ、あなたがいなくなるのは寂しいわ。だから、学園は忙しいでしょうけど、できるだけ手紙をちょうだい。いいわね」

「はい。手紙、書きます」

「学園の入学に関しては私たちが保証人ですからね。いわば親代わりよ。困ったことがあれば早めに相談してね」

「ありがとうございます。頑張ります」


ターニャはそれ以上何も言えなかった。涙は止まらなかったが、声を立てて泣くのは必死で我慢した。


こうしてターニャは砦での生活と別れを告げた。

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