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ターニャは仕事での刺繍を複雑にしていくことで、自信をつけていった。一方で、それ以外の芸術、音楽や絵画といった分野は、資料で分かる美術史的なことを覚えるくらいしかできなかった。座学を自分と同等に学び、且つ正騎士団員から剣技を学んでいる仲間を見ると不安に感じていた。その結果、今の自分にできることだけは完璧にしようと、更に座学に精進するのだった。


そうこうしているうちにまた一年が過ぎ、ターニャが試験を受けるために王都へと向かう時が近づいて来た。共に向かうのは1つ年上で、それなりに剣技を身につけた仲間である。とは言うものの砦にいた期間はターニャの方が長い。座学に関しては誰よりも自信があるが、実技に関しては誰よりも自信がない、という中途半端な気分だった。だからと言ってもう1年砦にいたところで実技を伸ばすことはできない。目指す先を騎士科に変更するならば鍛錬もできるだろうが、ターニャにそのつもりは一寸たりとも無い。やはり、今年受けるのが一番いいのだ。


ヴァルド砦では皆受かる前提で王都に向かう。そのため、王都に向かう者の多くはそのまま王都にとどまる。というのも砦から王都まではかなりの距離がある。砦から試験を受けに行く旅程は団長が仕事で王都へ向かう際に同行することになる。だが、その後団長とともに砦に戻ると、入学時期に間に合うようにまた王都に出てくるのは自己責任となるのだ。野宿をすれば宿代などはかからないかもしれないが、旅の間の食料も自分で用意しなければならない。更に、12歳の子どもだけで旅をすることは危険である。


フェンベルグ王国では12歳と言えば見習い期間を半分終え、完全な子ども扱いはされない。しかし、完全な大人扱いされることもない。大人になるための訓練期間のような位置づけである。大人としての行動に挑戦することが許されるが、結果に対する責任はそれを許した大人にある、とされる時期である。だから、12歳での子どもだけの旅が許されることはほとんどない。金銭面で余裕があれば護衛をつけるのが普通だし、余裕がなければ旅をしない。つまり受験から入学まで、多くの者は卒業まで、王都にとどまることになるのである。


また試験から入学までの半年の間には、王族や高位貴族と接しても失礼にならない程度のマナーを学ぶための特別講座が開講される。入学すると同時に平民であっても王族や高位貴族と同じ教室で学ぶことになるのだ。最低限のマナーを身につけておくことは大切である。更に寮は試験後すぐに入れるため、試験後卒業まで帰らない者も多いのである。ちなみに王族や高位貴族の場合は受験後、半年近くかけて寮の部屋を整えるため、本人の入寮は入学間近となる。

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