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ターニャが砦に来てから3年が経過した。ターニャは10歳になった。砦に来る新人見習いとやっと同じ年になった。
ターニャが砦に来た時新人だった者たちの一部は既に王立学園に入学している。ターニャもあと2年で学園に入学しなくてはならない。
学習の時間には学園の入学試験がどのようなものかを説明もされた。試験を受けるのは12歳が多いが、多少の前後は認められる。実際には11~13歳で受ける者が多い。結果的に、複数回挑戦することが可能である。特にいいところに就職したい平民は、受かる可能性を高くするために何度も挑戦する者もいる。ただし、平民が受験するためには貴族位を持つ者の推薦が必要なため、数は多くない。貴族の場合、10歳や11歳で受かれば誉れとなる。しかし早めに受験して失敗し、複数回挑戦することは不名誉である。そのため、余程自信がある者でないと早めに受けることは無い。
ターニャは砦にいられる期間が限られていることから、できれば早くから試験に挑戦したいと思っていた。試験の内容は作文・算術・王国史が共通で、淑女科は芸術の実技試験がある。騎士科は当然武術の実技があるし、魔術科は魔術の実技がある。ターニャは砦での学習で、共通科目はそれなりに自信があるが、実技が不安だった。学習する仲間は皆騎士科を目指している。ターニャとは実技の科目が異なるのだから、淑女科で求められる水準も自分の力も分からないのである。
不安だったターニャは学習に行かずに繕いの仕事をする日に、女性陣に実技について尋ねることにした。
「淑女科の実技試験って、芸術って聞いたんですけど、何をするかしってます?」
「王立学園なんて、あたしらみたいな下働きじゃ行ってないのがほとんどだよ」
「砦の中で淑女科を出てるのは奥様とミレーネさんくらいだろう」
「ターニャはそんなに早く受けるつもりなのかい?まだ10歳だろう?」
「落ちた時にもう一回挑戦できるように、早めに受けたいなって思って…」
「そりゃそうだ。後がないんじゃあ心配だもんねえ」
「ミレーネさんに早めに相談したらいい」
「そうですね、そうします」
早めにの受験に肯定的な意見をもらい、ターニャは安心した。さっそく、1日の仕事が一段落ついた頃を見計らい、ミレーネに相談に乗ってもらいたいことがあると声をかけるのだった。




