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そもそもターニャは他の見習いに比べて学んできたことが少なかった。まず、ターニャは他の見習兵士より年少である。また、学ぶ機会も無いよりはまし、という程度であった。だからこそターニャの学ぶ意欲は抜きん出ていた。
砦での学習指導は、指導書を読む順が指定されている程度である。1冊を読み込み、理解できたら指導者に試験をしてもらう。合格できれば次を読む、といった感じである。自分で読んでわからない時は仲間に尋ねたり、指導者に教わる。
砦によっては同年の者が集まり、皆で音読し、解釈するというやり方をしている所もある。これは各砦の責任者の方針による。学習時間が午前か午後かも砦によって異なる。
ヴァルド砦は他と比べると放任型であるが、逆に本人のやる気がなくてはならないので、少数精鋭になる傾向がある。つらい学問に励む仲間意識が高いのも、ヴァルド砦の特徴だ。そんな中でターニャは初め、異色の存在だった。
まずターニャは周りと比べて小さかった。そして、誰よりも勉強ができていなかった。少年たちは、自分たちも子供であるにもかかわらず、
「子どもがこんな所で遊んでるんじゃない」
という態度をとる者もいた。が、ターニャは
「私もここで見習いとして働いているんです。この時間に学ぶことは許可ももらっています」
と言い返した。それに
「だいたいお前はろくに勉強してきてないじゃないか。そんなんで、よくここで学習したいなんて言えたな」
「勉強できないからここで学ぶために来たんです!」
と、言い合いになった。
だが故郷に妹をおいてきている者など、ターニャを構うものもいた。ターニャはわからないことがあると、そうした者に助けを求めた。中には少年の中ではできない方におり、劣等感を持っていた者が、ターニャに教えることで自尊心を回復するということもあった。そしてターニャに教えることは当人の理解の助けにもなる。気づけばターニャに教えることは当たり前になっていた。
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