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一話が短くてすみません…。

村にレスコー商会が来た日の夕食の時、ターニャは両親に早速切り出した。


「お父さん、お母さん、私レスコー商会で見習いになりたい。」


フェンベルグ王国では7歳前後で見習いとして働き始める。見習いとして10年勤めると一人前と認められるのだ。大抵の者は家から通える範囲のところで勤める。実際多くの者は親の家業を手伝うことから始める。よほど親の家業が性に合わないという者でも近所の知り合いを頼ることがほとんどだ。

もっともターニャのように王都に出て一旗揚げたいという者もいる。その場合は知り合いを頼って間借りさせてもらうか、下宿屋に逗留するかだ。下宿屋の場合はただでさえ少ない見習いの給金から払わなければならない。働く場合はしっかりした身元保証人が必要となる。村から働きに行く場合は村長に頼むこととなる。


「ターニャはレスコー商会で見習いになることがどれだけ大変かわかっているのかい?」

父親は、ターニャの言うことが本気なのか子どもの他愛無い憧れなのか測りかねた。

「すっごく、すっごく大変だっていうのはわかってる。でも、私は織り手じゃなくて縫い手になりたかったの。刺繍をしたいの。でもこの村じゃ縫い手になっても縫える服なんてせいぜい村長さんちの晴れ着でしょう?刺繍なんてほとんどしないだろうし、もっといろんな服を縫えるところに行きたいの。」

「そのためにはある程度縫物ができて、読み書きができるくらいでないと見習いにはしてもらえないのだろう。」


ターニャは元々村の縫い手を目指していただけあって、縫物の腕は5歳にしてはうまい方である。ただ、ターニャが縫ったことがあるのは、せいぜい家族の服につぎをあてるくらいである。読み書きについては、全くできない。ある程度はターニャの両親でも教えられるだろうが、きちんと教わるためには村長を頼らなけらばならないだろう。


「村長さんの家の人に頼んだら教われるかな?」

「村長さんの家でお手伝いをする代わりに読み書きを教わったらどうかしら?」

ターニャの母は織物が好きで、織り手となるために努力し、親の家業とは異なる仕事を手に入れた。子どもがやりたい仕事があるならば、応援するのが親の務めだと考えていた。むろん実現できるかどうかはまた別の話である。





結局ターニャは、両親から教われるだけ教わった後は、村長のところで手伝いをしながら、読み書きの基本を教わることとなった。まだ見習いとして働くわけではないから、給与は出ない。その代わりとして、村長の息子が読み書きを習っている時に同席することを許された。この村では読み書きはできなくとも何ら問題はない。見習いになってから一人前になるまでにそれなりにできるようになれば十分なのである。村長の息子のマルクはすでに8歳で、見習いの仕事の一環として、読み書きや計算を学んでいる。

当然マルクの方がターニャより勉強は進んでいる。ターニャはわからないなりに必死で授業を聞き、わからなかったところを後で知っていそうな大人に教わるのだ。学習は思うように進まないが、わずかでも夢に近づいているはずだと自分を励ます日々を送っていた。



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