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今後の方針が決まったことでターニャの精神状態も落ち着くことができた。
王太子殿下に「今後も何かあれば相談させてもらう」とは言われたものの実際にできることはもう無いだろうと思ったからだ。自分にできることが無いのならば、今他にしなければならないことに注力するだけだ。今後精霊教会はどうなるのだろうか、とか、自分がエルヴィーラに祈る祠はどうなるのだろうか、誰にも告げず、ひっそりと祀ればいいのか、とか考え始めるときりがない。でももうそれは自分一人で考えても仕方がないことだと割り切って考えるのだった。
王太子も言及していた建国290年の建国祭までは残り数か月だった。加護についてどのように発表されるか気にならない訳ではなかったが、日常の業務に加えて建国祭の準備もあり、忙しさから余計なことを想い悩む暇はなかった。毎年開催される建国祭だが、節目の年でもあり、例年よりも盛大に行われるからだ。290年でこれなら、300年の時にはどれほどの規模で行われるのかと、今から空恐ろしいような気がした。
建国祭では王が教会に行き、その後王城までパレードで移動し、バルコニーから建国を言祝ぎ、夜には祝賀会が催されるという流れになっていた。王太子夫妻も国王夫妻と行動を共にする。従って教会での儀式用、バルコニーでのお披露目用、祝賀会用とドレスや装飾品を用意しなくてはならなかった。それに合わせた髪型を決めたり下着を用意したりと、どこか浮かれながらも慌しかった。当日は侍女も誰がいつどこに侍るかを確認し、そのための服装もそろえたりと、準備に余念がなかった。
もちろん準備はそうした外見に関することだけではない。当日の招待客の情報を確認し、挨拶をしなければならない相手を把握しておく。相手ごとに望ましい話題、避けねばならない話題なども確認する。パレードの道順も把握し、不都合が無いか確認する。
ターニャ達侍女も忙しかったが、護衛騎士のジルも忙しかった。日常の護衛勤務に加えて建国祭当日の護衛の計画なども確認しなくてはならなかったからだ。互いに忙しくしながらも、言葉を交わすことのできるわずかな時間を大切に過ごすのだった。
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説明ばかりですみません。




