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誤字報告、ブクマ、評価、ありがとうございます。


ターニャの砦での暮らしはひと月もすれば落ち着いた。

砦に来た初日はあまりの淋しさに布団にもぐりこんでから泣いてしまったターニャだった。慣れない環境に来たのだから、と来た日は早々に屋根裏の使用人部屋で休むことになった。そのため、使用人部屋にはまだ誰もおらず、一人で知らない場所で、という不安感から思わず泣いてしまったのだ。それに気づいた先輩メイドたちが声をかけてくれたことで、寂しさもまぎれ、また次の日からともに仕事をする上での助けとなった。


ターニャは同世代の仲間がいないことに心細さを覚えており、先輩たちは世間知らずの子どもが来ることに戸惑いと少々の反発を覚えていた。初日、ターニャは寂しさにべそをかきながらも「帰りたい」とは口にしなかった。様子を気にした先輩の1人が

「まったく、こんな小さいのによく来たね。家が恋しいんだろう?住み込みで見習いに出るのはもう少し大きくなってからでもよかったろうに」

と声をかけた。ターニャはそれを聞くと、

「家は恋しいですが…ここに来られたのはうれしいんです。今からでないと私の夢は叶えられないから…。泣いてしまってすみません…」

と答えた。それに対し、

「今でなくても、節目節目で奉公先を格上に変えていけばよかったんじゃない?」

と言われたことでターニャの涙はピタッと止まった。

「奉公先を変える…?」

「ああ。奉公先でしっかりと勤めていれば格上の店とかお屋敷から声をかけて頂けることがあるだろう?それは考えなかったのかい?」

「村で奉公に出たら、よっぽど仕事が合わないか、奉公先を追い出されるような場合しか仕事を変えることは無いから…。街では仕事を変えるのが普通なんですか?」

「最初っからいい奉公先に入れればいいけど、そのためにはそれなりの家の出でないと無理だからね。この砦に来る見習い達だって街の警備隊から推薦をもらえた子たちが来るんだよ。下級貴族の次男坊とかもいるけどね。上級貴族は家庭教師を雇って剣の腕を磨くらしいが、そんな金のない家だとこういうところへ来るんだよ。ここで力をつければ学園に行けるだろう?そうやって段々と夢に近づいていくんだ」


村では夢に近づいていくための手段などなかった。


「街ってすごいところなんですね…」

ターニャの言葉を聞き、先輩メイドのクロエは目を瞠ってそれから笑い出した。

「ああ、すごいだろう。だが、あんたはその街の人間以上に最初からすごいところに奉公できたんだ。しっかり、頑張んなよ」

「はい、頑張ります。よろしくお願いします!」



予約投稿失敗してました。遅れてすみません。

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