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精霊様に関することは、ターニャは真っ先にイコに相談する。
「本当に王家はもう精霊様の加護を受けられないの?」
それに対するイコの返事は素っ気無いものだった
「受けられる訳が無い。自分から捨てたくせにもう一度加護を下さいなんて、許されると思う?」
確かにそうだろうな、とターニャも思う。
「そもそも自分から捨てることを選んだのだから、あえて加護は捨てました、って公表してしまえばよかったのに。都合がいい時だけ精霊を使おうとするのが間違いなんだ」
イコの怒りは尤もだとターニャも思う。でも
「イコが加護を与えているような振りをする、ということはできないのよね?」
一応、やれそうなことは確認すべきだと尋ねてみた。
「絶対にそんなことはしたくない。もししたらエルヴィーラに赦してもらえない。私の存在が危うくなるかもしれないのに、絆を結んだターニャの為ならともかく、あんな奴の為にそんな事はしない。どうしてもしろってターニャが言うならあなたとの縁を切る」
ターニャは慌てて言った。
「ちょっと聞いてみただけよ。私は貴方との縁を切ってまでそうしてほしいなんて思わない」
それを聞くとイコは嬉しそうに
「ああ。ターニャならそう言ってくれると思っていたよ」
と答えるのだった。
その日からターニャは何かの折に考え込むようなそぶりをみせるようになった。本来ならばターニャには関係のないことである。ただ秘密を知る人間の少なさから、自分が何某かの解決策を考えねばならないような焦燥にかられるのだった。
(加護が無いことを公表する、これは決定ね。今後はなくす、とするか、既に無い、と言うかは……。今後は、とするなら不安を煽るし、既に無い、と言えば騙していたのか、と批判される。公表の仕方をうまく考えないと、王家の権威が揺らぐことになる。どちらを選ぶかは王太子殿下に指示を仰ぐべきだろう。方針が決まらなければ策を立てることもできない}
そう自分の中で結論付けたものの、では公表するとしたらどのように、とついつい考えてしまうのだ。周囲は、精霊のことで話をしたい、とターニャが言っていたことを知っているので、そんなターニャを心配げに見ていた。
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