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結局ターニャはヴェルムとは精霊様に関してはほとんど話さないで終わってしまった。そして翌日、ヴェルムはまたユーゴ達と話そう思い、彼らをサロンに呼び出した。
「今日は来てもらって感謝する。また先日は貴重な助言をしてもらったこと、併せて感謝する。おかげで自分の将来の道が見えてきたように思う」
「感謝は謹んで受取ります。よろしければヴェルム様の将来の道というものをお聞きしても?」
「ああ。それについて改めて頼みたいことがあるのだ」
この言葉にはユーゴが即座に反応した。
「我々はヴェルム様の側近という訳ではありません。お役に立てることはほとんどないかと愚考いたします」
ヴェルムはユーゴの警戒を気にしないかのように応えた。
「貴殿等が兄上の、王太子殿下の側近を目指しているということは聞いている。その上で、私と王太子殿下との間の連絡役のようなことを頼めないだろうか?」
「連絡役ですか……」
毒気を抜かれたような表情でユーゴが応えた。
「ああ。私がこうしたい、と考えたところで今は簡単に家族と相談することも難しい。学園に入る前であればもう少しいろいろと話せたのだろうが、今は寮に入ってしまったから、気軽に帰って話すこともできない。入学前にある程度のことは決めておくべきだったのだな、と今になってわかった」
「今更ではありますが、お気づきになられたことはよかったかと」
「何しろ私は学園で自分に何ができるかを探すつもりだったのだから、呆れられて当然だった。貴殿等にも不快な想いをさせてしまった。すまなかった」
「……それで、連絡役とはどういうことかご説明いただけますか」
「つまり、私は兄上の考えを知る術がないのだ。同様に私の意思を伝える術もない。私は今将来について考えていることがあるが、それが兄上の意に添うものかどうかを確認したい」
ユーゴは狡猾そうな笑みを浮かべて応えた。
「それは私共にとって、どのようなメリットがあるのでしょうか」
ヴェルムも楽しそうに応えた。
「貴殿等が優秀であることは知っている。だが、側近になるためには単に優秀であるだけでは足りない。だが、兄上の意に添うように私を動かすことができる、というのは大きな利点になるだろう。違うかな?」
ユーゴは笑みを緩いものに変え、答えた。
「確かにその通りでしょう。ただ、貴方は私の思う通りに動いてくださるのですか?」
ヴェルムは少し怯んだように
「それはできる範囲で、としか言えないが」
と答えた。それを受けてユーゴは
「そうでしょうね。逆に簡単に請け負われるようなら信じられないところです。今のヴェルム様となら、協力できるように思います」
と答えた。
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