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ターニャとヴェルムは談話室で話すことにした。
「ターニャ様、今日は来てくれて感謝する」
初っ端からそう言われ、ターニャは思わず
「ヴェルム様もそういうことが言えるようになったのですね…」
と言ってしまった。本来ならば不敬と言われても仕方がないことだが、ヴェルムは苦笑しただけだった。
「其方には情けないところばかり見られてきたからな」
「失礼しました。それで、本日は精霊様のことをお聞きになりたいとのことでしたが、どのようなことをお知りになりたいのでしょうか?」
ヴェルムは自身の書付を出しながら答えた。
「まずこれはターニャ様も知っていることだと思うが、この地はもともとエルヴィーラという精霊の女王の土地だった。それを王家がエルネスティーヌの支配下においた。王家に加護を与えていたのが、エルネスティーヌという精霊だったようだ。だが、精霊の加護と呼ばれる恩恵を受ける者は世代を経るごとに減っていった。今では精霊の加護など、迷信だと考える者がほとんどだ」
精霊教会は加護を得た者を記録している。その加護を得た者を調べたところ、フェンベルグ王国ができた当初は王族は皆加護を得ていた。しかし、3代後に他国から王妃が嫁いできた頃から王家でも加護を得づらくなったようである。貴族の間でも代を経るごとに加護を得る者が減っていった。特徴的なのは加護を失った家は、二度と加護を得ていないということだ。そして、平民に関しては、フェンベルグ王国となってから新たに加護を得た者はいない。
「これを見るに、加護を得るための方法が何かあったのにその手段を失ってしまった、と考えるのが妥当だと思う。そこで思い出したのがターニャ様のことだ。貴女はあの時に精霊から加護をもらったのだろう?ここがもともとはエルヴィーラの地であるならば、改めて彼女から加護をもらえればいいのではないかと思ったんだ。貴女が加護の得方を知っているなら教えてもらいたい」
ターニャは意外に思った。
「精霊教会の資料を調べても何の成果もあげていないとお聞きしましたが、わかってきたこともあるのですね」
「それは1年以上調べていれば、それなりにわかることはある。ただ私はそれを誰にどう知らせるかというところで躓いているのだろうな。下手なことをして兄上より先に私が精霊に認められてしまっては困ることになる」
「それがわかっていて精霊様のことをずっと調べていたのですか?」
「私にできることはそれくらいだからな。だが兄上の邪魔には本当になりたくない。だからこのまま教会で調べ物を続け、最終的には神官になることも考えている」
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