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ファビエンヌはヴェルムと話していると頭がいたくなるようだった。
「ターニャ様なら今日は外交部に行っておりますから、すぐにはお会いできないと思いますわ」
「外交部?」
ヴェルムは不思議そうな顔をして尋ねた。ファビエンヌは、
(ああ、この人は本当に自分から何かを知ろうとか、情報を集めようとか思わないのね)
と感じ、もうあきれるを通り越して哀れに思うほどだった。
「ターニャ様は留学中の経験を買われて、外交部のお手伝いをしているのです」
ファビエンヌは穏便に会話しようとしたが、そこにユーゴが割り込んできた。
「まったく、あなたなら学園の優秀な人材のことくらい知っておくべきでしょう」
ヴェルムは思いがけないことを聞き、目を丸くした。
「そういうものなのか?」
ユーゴはますますヴェルムを馬鹿にしたように
「そんなことも知らないのですか?本当に、あなたができることなんて王太子殿下の邪魔にならないことくらいしかないのではありませんか?」
と言った。
周囲はヴェルムが激昂するのではと危惧したが、その言葉を聞いたヴェルムはしばし考えてから、
「確かにそうかもしれない」
とぽつんと呟いた。これには発言したユーゴも驚いてしまったが、ヴェルムは
「うん、確かにそうだ。これはいいことを教えてもらったかもしれない。自分の立ち回り方を改めて考えてみよう。助言、感謝する」
そう言って笑みを浮かべて立ち去った。ユーゴたちは呆然と見送るしかできなかった。
「どうしようもないお坊ちゃんだと思っていたが、自分のことはそれなりにわかっているのか?」
そんなユーゴのつぶやきに応える者はいなかった。
ヴェルムは自分の将来について考える傍ら、ターニャと話したいと思っていた。数日学園に通えば、昼食時には普通にターニャを見かけることができた。
「ターニャ様、精霊のことについて教えて欲しいことがあるのだが、都合はどうだろうか?」
問われてターニャは、相手の都合を訊くことができるまでに成長したのか、と驚いてしまった。とはいうもののそんな思いを表に出しては失礼なので、表面上は何事もなく、その日の放課後に会うことにした。
(精霊様について何が知りたいのかしら。噂では精霊教会で調べても何も成果は上げられていないようだけど、何かわかったことがあるならこちらも教えて欲しいものだわ)
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