128
「そしてやはりというか、何というか…私と縁を結んではどうかというお話がありましたわ」
そうファビエンヌは続けた。
「家格からいえばそれが一番順当ですものね」
「ええ。ですから私はそれも視野に入れて入学後から動いていたつもりです。女生徒は特に縁を結ぶ相手によってできることが限られてしまいますから、皆さま真剣に考えていらっしゃいましたでしょう?あのミリア様でさえ、真剣に将来を考えてらしたのですもの。考え方が少々妙な方向を向いていたことは否めませんが」
「ですが、自分にとって有益な相手を探す、という点だけは正しかったですよね」
「そうですわね。私も同じように自分にとって、家にとって有益な方を探そうとしていたのです。王族と縁を結べれば家にとっては有益かと考えたのですが、夫となる方を支えるだけの生き方は私は嫌ですの。互いに支えあい、助け合えるような相手と縁を結びたいのです」
「そのお相手がユーゴ様なのですね」
「そうであると思っていますわ」
素っ気ない答えでありながら微かに頬を染め、尋ねたターニャから目を逸らすファビエンヌを見て、ターニャは思わず口元が緩むのを感じた。
「ファビエンヌ様がそのような表情をされるということは、条件が合うだけでなく情もあるということなのでしょうか?」
楽し気にターニャが尋ねれば、照れ隠しなのか強い口調で
「この方と縁を結ぶのだと思ってお付き合いをしていれば情が湧くのが当然でございましょう?」
と答えるのだった。
「私のことよりもターニャはどうでしたの?なかなか戻ってこないので、ルビシェースカで縁を結ぶつもりなのかと心配してしまいましたわ」
「留学に関していろいろと便宜を図ってもらいましたのに、その恩を返さないうちに他国で縁を結ぶなどあり得ませんでしょう?どうして皆様同じようにおっしゃるのかしら?」
表情一つ変えないターニャを見て、これは本当に何もなかったのだな、とファビエンヌは内心でため息をついた。
「私たちくらいの年代ですとそれが一番の関心事だからではないかしら。実際ターニャは卒業後はどうするか考えているの?卒業まではあと一年もないのよ」
「私は女官を目指すつもりです。今回ルビシェースカに留学したことで、多くの他国の方と知り合うことができました。他国の文化についてもいろいろと学べたので、政治的な外交交渉は無理でしょうが、その手助けくらいはできると思うのです」
読んでいただきありがとうございます。




