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ファビエンヌたちとの茶会はヴェルムの動向が中心だった。
「ヴェルム様はその後はどうされましたの?」
「精霊教会に協力してもらって、教会の資料を調べていると聞いていますわ。実際にどのような成果が出ているかは聞きませんね」
「結局ターニャがいなくなってしまったから碌な成果は出せなかった、ということなのではないかしら」
「私がいなくとも、私の出身地の近くまで行けば、私以上に精霊様について話せる方はいくらでもいるでしょうに。探せば精霊の御加護を受けている方だって……」
「私達もそう思いますわ。でもヴェルム様はターニャがいないなら、ターニャが帰ってくるまで待とうと思ったのではないかしら。ターニャがいないから調べが進まないとヴェルム様が愚痴をこぼしてらっしゃったそうですから……」
「ターニャの生まれた村を調べるよう助言なさる方もいなかったのでしょうね」
「それでひたすら300年前の資料を読み漁ってらっしゃるようですわ」
「ある意味300年前から放置されている資料を整理して、読みやすくまとめ直してらっしゃるのですから、それだけでも成果が出ていると言えなくもないのではないかしら」
「それを成果と言ってしまっていいのでしょうか」
「あら、一次資料のまとめ直しというのは大切な基礎研究ですわよ。ヴェルム様には、まあいいのではないかしら」
「王権への叛逆かと言われたことを考えれば、却って今のような状態は良かったのかもしれませんね」
政治面を考えればそれでいいのかもしれないが、学問という面から考えた時、それでいいのだろうか。確かに一次資料の確認は大事だが、他にもできることがあるのにそれをしないというヴェルムの態度には納得がいかなかった。だが、だからこそヴェルムは無事でいられるのかもしれない。現王の精霊の加護を否定し、更に自分が正しい加護を得る、などと主張したら、即病死させられてしまうだろう。ヴェルムはその危険性をわかっているのだろうか、とターニャは訝るのだった。
それに対しファビエンヌは
「あの方の言動からしてわかってはいらっしゃらないでしょうね。でもあの方の怠惰な……、考えの浅……、視野の狭い考え方がよかったのでしょうね」
「ファビエンヌ様、結局適切な表現になっていらっしゃらないようですが」
「適当な表現がみつからないのですもの。仕方ないですわ」
読んでいただきありがとうございます。
会話文ばかりになってしまい、読みにくかったらすみません。




