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1年半ぶりにファビエンヌと会ってターニャは戸惑ってしまった。新学年の始まる前に学園に戻ったターニャは寮でファビエンヌと再会した。会わない間にファビエンヌは背もかなり伸び、とても女性らしく成長していた。一瞬誰かと思ってしまうほどだった。それはファビエンヌも同様だったらしく
「まあ、ターニャ様。ようやく帰って来られたのですね。お会いしない間に随分変わられて、どなたかと思いましたわ」
と話しかけてきた。この言葉遣いからしてルビシェースカとは違うな、と懐かしく思いつつ、ターニャは答えた。
「本当に、思いもかけず学ぶことが楽しくて、帰るのが遅くなってしまいました。ファビエンヌ様こそ随分とおきれいになられましたね」
言葉としては儀礼的であったが、その中身に嘘はなかった。
「それだけおきれいになられたのですもの。ファビエンヌ様は縁談なども随分とおありなのでしょう?」
サイとのことを割と周囲に騒がれたことで、ターニャはついそうした方向に考えるようになっていた。尋ねてから直截的すぎたかな?と内心慌ててしまったが、ファビエンヌは気にした様子もなく、
「当然ですわね」
と答えた。
「正式にまとまるまで公にはできませんが、私の縁談はほぼ決まりましたわ。1年後には卒業ですのよ。卒業後の進路は早目に決めなくては。ターニャ様こそどうされるつもりですの?」
ターニャは胸を張って答えた。
「私は女官として外交に携わりたいと考えております」
ファビエンヌは意外なことを聞いた、という風で目を丸くした。
「ターニャ様は結婚しないのですか?」
これにはターニャも目を丸くした。
「ファビエンヌ様、私は平民ですよ。この学園で釣合う方がいるとは思えません。身分が釣合う方はほぼ騎士志望ですから、結婚後に外交に関わることは難しいでしょうし、外交に関わる方は身分が高すぎますわ」
それを聞いてファビエンヌは首を傾げた。
「ターニャ様、我が国では優秀であれば、そこまで身分を気にする必要はありませんわよ。男性だとて、身分があっても能力のない女性より、多少身分が低くとも優秀な相手を求めるものですわ。ターニャ様が何を学んできたか知られれば引く手数多になりますわよ」
そう言うファビエンヌがあまりにも自信あり気だったため、ターニャは言葉を思わず飲み込んでしまった。
(多少ではないと思うのですが……)
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