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誤字報告ありがとうございました。

「ターニャは本当にやりたいことが見つかったのかしら?」


「本当にやりたいことかどうかはわかりませんが、今は学ぶことがとても楽しいです」


「……そう。ターニャ、厳しいことを言うようだけれど、やりたいことは早くはっきりさせて、そのための立場を得るための努力をそろそろしないといけないのではないかしら。学院も後1年でしょう?そうしたら婚姻を結ぶのか、働くのか、働くとしたらどこで働くのか、早めに考えて動かないと卒業に間に合わなくなってしまうわよ」


「そうなんですね。学院で学ぶことができるのはあと1年しかないのですね。学ぶことが楽しくてつい先のことを考えることが疎かになっていました。このまま学び続けることができればいいのですが、難しいのでしょうね」


「そうですね。平民で学院に入った者は学費が免除されていますが、卒業後も残って学ぶとなると学費を支払わなければなりません。卒業後も残るにはご実家が裕福か、さもなくば在学中に何らかの成果を残すしかありません。買い取ってもらえるような成果を出せば能力的にも経済的にも十分ですが、そこまでの成果を出すのはかなり大変でしょう。大抵の女生徒は自分の力を発揮できる場を婚姻で手に入れるのです。領地経営や外交をする夫を補佐する立場で力を振るうのですね。あるいはそうした夫人の補佐をする侍女になる者も、下級貴族出身だと多いわ。あなたが何を目指すとしても、1年間悔いの無いようにがんばりなさい」


「ありがとうございます。……もし砦で奥様にお仕えしたいと申し上げたら、侍女として採用して頂けるのでしょうか?」


ターニャの口をついてそんな言葉が出てきた。将来への不安から、万一のときの行き場が決まっていれば安心だとふと思ったのだ。かつて砦で暮らしていた時、ここはとても居心地がよかった。


「だめよ。貴女は優秀で、性格も素直で、仕えてくれたらとても助かるでしょう。でも貴女のしたいことはここにはないでしょう?学院を卒業するような子が仕えるのは最低でも上級貴族よ。役職持ちの男爵の夫人ならともかく、その侍女ではもったいないわ。」


「奥様……」


「何かあれば相談には乗るわ。何もなくても遊びにいらっしゃい。ここを実家と思っていいのよ。でも、ここにとらわれるのではなく、大きく羽ばたきなさい。ターニャ、貴女は刺繍がしたいからと言って、村を飛び出して来たのでしょう。やりたいことに向かって、また飛び出していけばいいのよ。もしダメだったらまたやり直せばいいの。やりたいことをしなかったという後悔はしてほしくないわ」


そう、村を出る時ターニャには不安なんてなかった。あったのかもしれないが、それを自覚できないくらい、新しい道が開けたことがうれしかった。今ターニャの前にはたくさんの道がある。選択肢が多いから、最善を選べるか不安になるのだ。失敗したらやり直せばいい、という言葉はターニャの心にすっと沁み込むようだった。

今年も読んでいただき、ありがとうございました。

来年こそは完結に向けて頑張ります。

来年もよろしくお願い致します。

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