114
結局のところ、ターニャとサイの間には友情以上のものは生まれなかったのだろう。もし出会った環境が違えば、また違った結果になったのかもしれない。実際ターニャとサイの相性は悪くなかった。だが、結婚相手に求める条件を無視してまで相手を求めるほどの情熱を持つことはなかった。要は縁がなかったということなのだろう。
そうして、ターニャはルビシェースカとエイデンの人との縁と、その国々の文化や考え方に対する洞察を得て、フェンベルグの学園に戻ることになった。
フェンベルグに戻る際、ターニャは迷っていた。というのも、王都に戻る際に少し足を延ばせば3年間お世話になった砦と、生まれ育った村に寄ることもできそうだったのだ。王都からわざわざ行こうとすれば往復で2週間かかってしまうが、帰途に立ち寄るならば5日ぐらい余計にかかるだけだ。もともと1か月近くかかる旅程なのだから、数日伸びたところで別段問題はない。それに、砦に寄って無事に学園に入学できたことを報告したい。でも、村に行くことには不安があった。村に戻ったことを奇貨としてそのまま居着くように言われてしまいそうな予感があった。
「イコはどう思う?」
この留学期間中ターニャと絆を結んだ、エイデン流に言えば契約精霊のイコはターニャとのきずなを強めていた、訳ではなかった。このルビシェースカはフェンベルグよりもエルヴィーラの力が強いらしく、イコはターニャと共にいるよりも自由にしていることが多かった。ターニャはターニャで、常に一緒にいなくてはいけないものだとは思っていなかった。後になってからサイに、契約精霊を自由にさせすぎだ、という内容の注意をされたほどだった。だが、ターニャにとっては精霊は敬うべきもの。精霊との契約はイコを縛るものではなく、絆を結ぶものだと考えている。だから、サイには申し訳ないが、ターニャはイコを自由にさせてあげられていることに満足していた。サイはターニャとイコの関係は、正しい精霊術士と精霊との関係とは言えないとことあるごとに言っていたが、ターニャはそれでいいと秘かに思っていた。
「ターニャがエルヴィーラの洗礼を受けた祠へ行ってみたい」
読んでいただきありがとうございます。
いいね、ありがとうございます。




