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ターニャの家族は村長の家に連れてこられて、ニコラスと会うこととなった。昨年少し話したことのある父親はそうでもないが、ターニャも母親も随分と緊張していた。


この家族を見て、ニコラスはすぐに察することができた。

(わがままだと言うのは村長の言いがかりだな。聡明そうな娘だ。村から出したくないのだろう。)

優秀な人材は財産である。村長にとってターニャを村から出すことは損失だと判断するのは当然である。そして、そのような優秀な人材を見つけ、世に出すことがニコラスの仕事でもある。


「君が砦で働きたいという子だね」

「はい、そうです」

「砦で見習いとなれば、一人前になるまで、どんなに泣いても村には帰れないぞ。」

「はい。母さんにも言われました。でも、私はやりたいことがあるから、最後まで頑張ります。」

「(いい目をしている。この娘なら言葉通り頑張れるだろう)親たちもそれでよいのだな」

「はい、この子はこの村には収まりきらないように思います。どうかよろしくお願いいたします」

「あいわかった。では、明朝砦に戻る際に一緒に連れて行こう。寝坊して遅れるなよ」

ターニャの家族は緊張しつつも、希望が通ったこともあり、最後には笑みのようなものを浮かべる程には気持ちが緩んだようだった。残念そうな表情を浮かべる村長とは対照的だった。



翌朝、ターニャは旅の支度を整え家を出た。旅の支度と言っても、荷物は大きめのカバンが一つ。中に入っているものは替えの下着が二組とハレの日用のワンピースが一着、そして、宝物の巾着くらいであった。


ニコラスの一行には税として納められた小麦などを運ぶ荷馬車があった。ターニャはその馭者台に一緒に乗せてもらうことになった。初めは荷物とともに荷台に、とも言われたのだが、荷台に一人では退屈だろう、と馭者をしているアランが馭者台に誘ってくれたのだ。ターニャにとって、御者台の高さからの景色は物珍しく、ただただ旅に出られることがうれしかった。

ターニャの両親は

「体だけは壊さないようにね」

「砦の方々に迷惑をかけるんじゃないぞ」

と声をかけた。いかに本人の希望があろうとも、7歳で家から出すのは寂しいものだ。だが、親が寂しいそぶりを見せてはだめだろうと、笑顔で送り出すのだった。ターニャは両親と別れるということにまだ実感もなく、

「うん、頑張る。きっと一人前になって帰ってくるね」

と答えた。そして、初めて

(そっか。一人前になるまで帰れないんだ)

と思い至った。急に寂しさを感じてしまったが、今さらそれを表すこともできない。改めて、自分の決断の重さを感じるのだった。

こんな拙い話をブックマークして読んで頂き、ありがとうございます。ブックマークが1件減ったことで思いがけずショックを受けてしまいました。そのおかげでブックマークして読んで下さる方の有り難みをつくづく感じました。

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