プロローグ
紅く染まる街、轟く破壊音と人々の悲鳴。
闇の帳が降りた街は絶望に飲まれていた。
魔人の襲撃により今、この街は蹂躙され人々は絶望するしか無かった。
自分が生き残る為と周りの人々を蹴落とし逃げ去る者を見て愉悦に浸る魔人。
そして魔人の狙いは1人の女にあった。
―――――――――――――――――――――――――
「まだか!まだ見つからんのか!」
国王の叱咤にビクリと肩を震わせる騎士。
「いえ、陛下。もうあの者は魔人の元へ向かっております。」
その答えを聞き国王は深いため息を零す。
「そうか、ならば良い…あの者達の命1つでこの国が救われるのなら仕方の無い犠牲だ。」
そう言いながらも苦悶に満ちた表情から国王の葛藤が見受けられた。
「しかしあの者を、ヘカティアを魔人が狙うかは理解出来る…だが何故国を襲ったのだ?」
魔人は人々の負の感情を好む為ただの気まぐれの線もある。
だが、それならばわざわざ国王へ彼女を差し出せとは言わないはずだ。
虐殺の限りを尽くし、その上であの者も殺す気なのだろうか?
考えても、魔人の考えなど分かるわけも無い。
故に国王は魔人にあの者を差し出し国を守ると決めたのだった。
―――――――――――――――――――――――――
「久しぶりだなぁ〜?ヘカティア」
襲撃してきた魔人の1人がそう呟く。
ヘカティア・リベスターは元は魔人であり、魔人王の娘で次期魔人王候補の1人だった。
「黙りなさい。どう言うつもりですか?この様な真似をして私が見過ごすとでも?」
ヘカティアは問に答えること無く剣を構える。
「ちっ頭の堅いお方だ事。この国の人間どもはお前に対する人質だよ」
魔人の一言で顔色が変わる。
「お前の首を差し出せ。そうすればこの国の連中は助けてやるよ」
「いや、お前ら…と言うべきかな?人間との間に産んだガキが2人いるだろ?」
その言葉を聞いてヘカティアの顔色は青ざめていく。
国王の直属の兵が来たと思えば魔人の目的が自分だと伝えられ、お前の責任だと、この国を救えといわれた。
「夫も娘も息子も殺させる訳にはいかない。私の首1つで諦めて貰います。」
しかしヘカティアの見込みは甘かった。
「残念、お前の夫とガキどもの元には既に俺の仲間が向かったさ。」
ヘカティアは最後の抵抗を取るべく夫達の元へ向かって駆け出した。
―――――――――――――――――――――――――
必ず守ると心に決め3人の住まう家をと急いだ。
(私の命だけで!3人は守らなきゃ!)
しかしその思いも届かず首を切り落とされた。
愛する息子と娘の前で…。
夫は既に殺されていた。娘も腹部を刺され死に絶えていた。
ヘカティアは最後に息子の命を守る為だけに全ての魔力を障壁へと変えその場で絶命した。
息子、クリフ・リベスターに深い心の傷を残して。
キャラ紹介
[聖魔人]ヘカティア・リベスター
{職業}冒険者
{年齢}34歳
{種族}魔人
説明
魔人を裏切り人間側に付いた魔人。
元は魔人王の娘であり魔人王の候補の1人であった。
自分が魔人である事を嫌い、人間を1度たりとも殺す事をしなかった。
魔人王の娘なだけに力は強く周りは手出し出来なかった。
10年前の魔人襲撃の1件でクリフと国を守る為に命を落とした。