執行官は、出迎えた
デニスの来訪に合わせて、私も領都に戻った。
鍛錬のおかげか、前に領都からシャリアンデに来た時よりも、随分と移動時間が短縮できた気がする。
「久しぶり、デニス!」
タイミングが良かったのか、私がアマーリエ様の屋敷に到着してすぐにデニスもやって来た。
「久しぶり、ディアナ」
長旅で疲れているだろうに、一切それを感じさせない柔らかな笑みを浮かべていた。
「積もる話もあるだろうけど、アルトドルファー伯爵がお待ちよ。ここから更にシャリアンデという街に移動しなければならないのだけど……」
「心配してくれて、ありがとう。でも、そこまで疲れてはないから大丈夫」
「そう?なら、こっち」
デニスを案内しつつ、自動車を停めている場所に向かう。
「ええっと、ディアナ。シャリアンデにはどうやって行くのかな?」
「自動車を手配したから、それで行きましょう」
四角い箱を、指さした。
案の定、デニスは首を傾げている。
「……?馬は?」
「自動車には風の魔法陣が組み込まれていて、それで動くんだよ」
自動車という乗り物を知ったときには、とても驚いた。
なんて、便利な乗りものなのだろうかと。
シャリアンデの街では常時結構な数の自動車が走っていて、ガスパールさんたちも驚いていたっけ。
ちなみに、領都では滅多に自動車を見かけない。私が以前滞在した時には、一度も走っているところを見たことがなかった。
……そもそもアマーリエ様は、鍛錬のためにと走って移動するので、殆ど車を使わない。
むしろ、自動車よりも速く走るアマーリエ様を見て、何で開発に至ったのだろうと疑問に思うぐらいだ。
デニスを車に乗り込ませて、私は運転席に座った。
ちなみに自動車を運転するには、しっかりと運転の講習を受けて運転の許可書を得る必要がある。
私も、業務の合間に講習を受けて許可書はしっかりと取った。
……取ったは良いものの、近場は足を使って移動するので、実際に運転したのは片手で数える程だけど。
手元のレバーを引くと、少しばかり自動車が浮く。
そして足元のペダルを踏み、前進させた。
「……凄いな」
「驚いた? 」
「ああ。魔塔で研究段階のものが、まさか既に実用されているなんて……な」
「これで驚いていたら、身がもたないかもよ」
そう言いつつ、更にペダルを踏み込んで加速させる。
「お、おい……。大丈夫か?」
「自動車は壊れないから、大丈夫」
「そうじゃなくて、ちゃんと制御できるのかって……うぁぁぁぁ!」
デニスの悲鳴を聞きつつ、シャリアンデに向かって全速前進したのだった。




