執行官は、付き添う 2
結局、午後の外隊の人たちとの見回りも私は付いていくことにした。
ガスパールさんたち三人とゾフィーさんとで森の入り口で外隊の人たちを待つ。
「さて、と。お待たせ」
やって来たラインハルトさんは、朗らかな笑みを浮かべていた。
「……あの男は?」
コソリとアグネスが耳元で問いかけてきた。
「ラインハルトさん。外隊の隊長だよ」
「あの男が?」
アグネスは疑わしい眼差しでラインハルトさんを見つめている。
まあ……確かにラインハルトさんの見た目は可愛らしくて、強そうには見えないけれども。
「あの男が強いかも疑わしいが……随分と少数じゃねえか」
「そうね。強い魔獣が出るって言うわりには……本当にこの人数で、大丈夫なの?」
「あのメンバーは、外隊の中でも強い人たち。さしずめ少数精鋭ってところだね」
コソコソと会話をする後ろで、ラインハルトさんとゾフィーさんが会話をしていた。
「目的地は、魔王の封印地か……骨の折れる仕事だねー」
「ええ、本当に。私は、すぐにでもアマーリエ様のお目覚めの準備をしたいのですが」
「はは、それなら大丈夫じゃん?行って帰って来るだけなら」
「あら、随分と自信があるようで。お手並み拝見させていただきますよ」
「勿論、ゾフィーさんがしっかりとお守りをしてくれたらの話だけど」
「ふふふ……そうですね。では、つゆ払いは任せましたよ。後ろは私がしっかり守るので」
「よろしく。じゃ、行こっか」
和やかな雰囲気の中、森の中を進む。
早速に、シルバーウルフの洗礼を受けた。
……さっき、私が戦った時よりも数が多い。
けれども、危うげなく外隊のメンバーが倒した。
そして、奥へ奥へと進んでいく。
「お、おおおおい、あれ、あれ、あれ……っ!」
遭遇した魔獣を見上げて、ロルフが叫ぶ。
レッドベアーか…….しかも、二体。
「動かないでね、ロルフ。二人も」
今にも逃げ出しそうだったロルフに釘を刺し、他の二人にも伝える。
私も、昔はこうだったのかな……。
相変わらず、外隊のメンバーは淡々と魔獣を倒していた。
奥へと進むごとに、魔獣のレベルが上がっていく。
森の中腹辺りから三人はすっかり静かになって、黙ってついて行くようになっていた。
……なんとなく、現実逃避しているような感じもあるけれども。
もう少しで、到着する……そんな、時だった。
腹の底に響くような、そんな音が響き渡った。
その恐ろしい音は、森の木々を、大地を揺さぶる。
恥ずかしいことに、その音が魔獣の威嚇音だと気がついたのは、その巨躯を目にした時だった。
現れたのは、アースドラゴン。
最早御伽噺にしか出てこない、幻の魔獣。
ガスパールさんを始め三人は、へたりとその場で腰を抜かした。
その三人を守るように、ゾフィーさんがドラゴンと魔獣の間に立つ。
そしてその更に前に、外隊の人たちが剣を抜いて立っていた。
外隊の人たちは、互いに連携し合い、魔法と剣でドラゴンに立ち向かう。
時折ドラゴンの攻撃の余波が私たちに降り掛かりそうになったけれども、その全てをゾフィーさんの魔法が防いでいた。
おかげで私は、皆の闘い様とドラゴンの特徴をじっくりと観察することができる。
まるで、御伽噺をこの目で見ているようだな……と、そんな暢気な感想が頭を過った。
そうこうしている間に、外隊の何人かが軽傷を負った。
「……ちっ。ヤバいっす、ラインハルトさん!」
「そうだねー……。子どもとは言え、ドラゴンは流石に荷が重いか。……君たちは下がっていて良いよ」
外隊の人たちが、ラインハルトさんの後ろに下がる。
代わりに、ラインハルトさんが前に出た。
……そして。彼が動き出したと同時に、ゾフィーさんもまた口を開く。
『風巻の征圧』
彼女の風魔法が、ドラゴンにのし掛かったその瞬間、ラインハルトさんの剣がドラゴンの首を落とした。
「手伝い、ありがとう。ゾフィー」
「いえ……邪魔をして、すいません。なるべく早く終わらせた方が良いと思いましたので」
「うん、ゾフィーの言う通りだよ。さて、さっさと進もう……かと思ったけど、彼ら動けそう?」
「運ぶので、良いです。どうせここから先、瘴気で動けなくなりそうですし。そこの貴方、私が二人を持つので、一人はお願いして良いでしょうか?」
そう言いつつ、ゾフィーさんはアグネスを肩にかけ、別の手でロルフを脇に抱える。
指名された外隊の人は、ガスパールに肩を貸して立ち上がらせ、そのままガスパールさんを支えながら歩き出した。
そうして、到着した。
アマーリエ様の愛する人が眠る、封印の地へと。




